2006年07月25日

7月25日物語U : 待ってるんですけど

6年ぶりの書き下ろし。
待ってたよ〜、 天童さん、 新作を読みたいようってもうずぅっと楽しみにしてたんだからぁ。

と、心待ちにしてた私のような天童荒太ファンには、ちょっと物足りないかもしれません。

オンライン書店ビーケーワン:包帯クラブ

包帯クラブ 天童 荒太著 2006.2 筑摩書房

永遠の仔 や 家族狩り のような重たいテーマにミステリーもからんだ長篇を期待してしまいますものね、 どうしても。

心に傷を負った場所へ包帯を巻く、 といったコミュニティを作る高校生たちのお話で、 YA向きに書かれているようで、ルビも多い。 新書で若い人にもお買い求めやすくしたのかも。

「永遠の仔」 や 「家族狩り」 は、 幼児や多感な少年期、青年期に受けた心の傷を、周囲に気づいてもらえないまま大人になってしまった人々のたどる哀しい話だったが、 「包帯クラブ」 は、 その傷を抱えたまま大人になってしまってはいけない、 受けた傷はゼロにすることはできないけれど、 傷を傷と認めてあげることが大事なんだよ、 それで少しは癒されることもあるんだ、 他人の傷に敏感になろう、 (永遠の仔) を育てちゃいけないぞ、という小説と私は受け取りました。

「永遠の仔」、「家族狩り」 を読むと、 とてもやるせない気持ちになってしまう。  ここまで大人になってしまったら、 ここまで闇が塗り重ねられたら、 もう助けることは非常に難しい。 
歯がゆさと悲しさと無力感が襲ってきます。  どうして周りの人は気づいてあげれなかったの?  直接的に他人の心を傷つけた人だけが悪のように言われるけれど、 見て見ぬ振りしていた人も間接的に傷つけていたのではないのか?

と、ここまで書いて、 よくある、 事件が起きてからの 「犯罪者がどうしてそんなことをしてしまったのか、 心の闇を探ろう」 みたいなTVや週刊誌の特集を思い浮かべてしまいました。  
こういう事件が起きたあと、 近所の人や昔の知人や元同級生たちからぽろぽろと証言が出てくるじゃあないですか。
「寂しそうにしてた」 「手足に痣が多かった」 「いつも汚れたままの服を着ていた」 「尋常ではない泣き声がしばしば聞こえた」 などなど。
犯罪を犯してしまった人は、 一人で生きてたわけじゃないし、 誰も何も見ていなかったわけじゃない、のですよね。  ちょっとあの人、 様子が変だよね、 アブナイよね、 と噂されてたりする。


起きなくても済んだかもしれない悲劇を生まないように、 その悲劇の芽を育てないように、 君たちや僕たちで、出来ることはあるんじゃないか? 
ほんの少しの思いやりや気遣い、言葉掛けで、 10年後の悲劇は減らせるんじゃないか? 
この本は、 若い人へのそんなメッセージなのかな、と思いました。

あ、もちろん、 大人にもね。


で、天童さん、 あのう、やっぱり、読書慣れした大人の小説読みたちにもぜひ、
「永遠の仔」 のような超大作を書いてくださいな。 
待ってますよ!   あと何年、待つのかなぁ・・・。


  
posted by tsukikohime at 10:44| Comment(8) | TrackBack(0) | 天童荒太 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月29日

10月28日物語 : あふれないように

やっと決心して 髪を切りに行くことにしたのに。


『おはよう! 天気が良いね。 何してるの?』

『これから美容院に髪を切りに行くところです。』

『切らなくても、良いんじゃない?』

『乾かすのが大変になってきたの。 これから寒くなるし。』

『あまり切り過ぎないようにね。』

イチロウさんはそう言うけど、20センチくらい切ってこようと思う。

ショートにしている人やパーマをかけている人は 2センチ伸びたり、1ヶ月もすると気になるらしいが、 私は長いので半年ほったらかしていても別段見た目、そんなに変わらない。


『おはよう。 何してる?』

『髪を切りに出掛けるところです。』

『少しにしておきなよ。』

『20センチくらいかな。』

『切りすぎだよ。 せめて10センチにして。』

『はーい。』

このくらい長いと20センチを10センチ切りましたと言っても、りょうちゃんじゃなくても男の人には、わからないはず。


『おはようございます。 良い天気ですね。 つきこさんは今頃洗濯で忙しい時間ですか?』

『今、出掛けるところでした。』

『どこに?』

『美容院です。』

『どうして?』

『髪を切りに。』

あ、 マサユキさんは一番まずかったかな。

『どうして? どのくらい?』

『伸びすぎて乾かす間に風邪ひきそうで。 15センチくらい。』

『やめてください。』

『では、10センチくらいにします。』

『ダメです。 そんなに。』

『8センチくらいにします。』

『2センチ。』

『7センチ。』

『2センチ。』

『5センチ。』

『3センチで手を打ちませんか。』

『わかりました。』

『ありがとう。』


なんだか・・・。

あちらの要望の度合いと、私の受ける器が、けっこう比例してるもんなのね。



予約を入れた武蔵境北口の美容院に行き、 3センチ位切ってもらった帰り 入ったことのない路地に足を踏み入れた。

こんなお店があったんだ。  道路から少し奥まったところに南欧風のオープンカフェみたいなたたずまいのお店があった。

パスタでも食べていこうかな。

と思ったら、 手打ちうどんの店だった。

地粉を使った手打ちうどんね、ふーん。 

食事を終えた客たちが、 店の前のテラスに出してあるタイル張りのテーブルのところで珈琲を飲みながらくつろいでいる。 

カフェテラスのあるうどん屋なんて、おもしろいな。 

食後にそこに座り、 セルフサービスの珈琲を飲みながら 目の前の道路を行きかう人々をしばらく眺めた。

誰もが普通に生活しているように見える。   誰もが大きな悩みに苦しんでいるようには見えない。  誰もが不幸には見えない。

でも、生きている限り何かしらの悩みや問題を抱えているはずなのだ。

以前に読んで、どうしてももう一度読みたかった本、 天童荒太 の あふれた愛 を バッグから取り出した。

この本には、 心の傷に悩み戸惑いそれでも愛することや愛されたい気持ちを持ち続ける人々が出てくる。   

傷つきやすかったり、繊細すぎたり、不器用だったり。  心のバランスを崩しかけている人々。

あふれた愛は、時として自身を傷つけ、 他人をも傷つけてしまう。


・ とりあえず、 愛

・ うつろな恋人

・ やすらぎの香り

・ 喪われゆく君に


4つの短篇が入っているが、 それらを 総してなんとぴったりの題名を付けたことだろう。


愛を入れる器は人によって大きさも形も違う。  目に見えないそれは経験で測ることも難しく。

対する相手によって 互いの器の折り合いもそれぞれ。


あふれた愛はどこに流れていくのだろう。


オンライン書店ビーケーワン:あふれた愛
posted by tsukikohime at 02:17| Comment(2) | TrackBack(1) | 天童荒太 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月30日

8月30日物語 : ふっふっふ

ふっふっふ・・  夏休み、あと2日ではないか。

ふたりとも、宿題も自由研究も終わったようだし、 2学期に持っていく荷物の用意もしたようだし、 制服はクリーニングから戻ってきてるし、 上履きも持って帰ってきてすぐ洗ってあるし、 学校に提出する書類も書き終わったし、 準備万端。
  
あとは、 この2日間で、夜更かし癖を強引に直せば ばっちり。

「暑かったけど・・ 短かったね、夏。」 ・・な〜んて 稲村ジェーンのセリフがおもわず出てきちゃうわ。
なんてね、 夏は短いけど、夏休みは長っかたです〜! 試験休み合わせて50日くらいあったもの。

「あれ? 何、このプリント。  空、そらー、ちょっと見てー。」

「本、読んでる。」

「『ご子息さまの成績と素行が悪くて、留年が決まりました。』って書いてある!」

「うそだねー。」

「じゃ、見てごらん。」

「なに?」

「ほら、これ。 覚えある?」


       技術家庭科よりお知らせ

  技術家庭科では、 2学期に木材加工を行います。
  個人持ち用具として、 鋸、 鉋、 金槌 をご用意ください。

   鋸 ・・・ 刃の部分が取り外しできる形のもの

   鉋 ・・・ 刃の幅が45ミリ程度のものが使い易い

   金槌 ・・ 両頭のものが良い

   袋 ・・・ 丈夫な布で出来たもの (用具の大きさにあわせた手作りが最適)


「なんで今ごろ、こんなプリント見つけるんだよ。」

「なんでって、見つからないより見つかったほうがマシな事態になっているのよ。  買っておいで。 買ってきたら、 お母さん 袋を縫わなきゃ。」

「ひとりじゃ、行けない。」

「どうして?」

「これとこれ、 漢字が読めない。」

「え? やだ。  ひとつめは ノコギリ。 ふたつめは アワビ よ。」

「あわび〜!?」

「なんで、 アワビなんて使うのかしらね・・・。 冗談よ。 カンナ って読むの。 わかったなら、 いってらっしゃい。」

「ひとりじゃ、行けない。」

「どうしてよ。」

「キレた14才が、 殺人計画を立ててノコギリやカナヅチを選んでいると 店員に疑われて、警察に通報されて連れて行かれて 聞かれたくない家庭の事情や、母親の素行やなんかも事情聴取されて、 家に連絡を取ってもらうと、お母さんは昼寝していて電話に出ないもんだから 夜まで そこで過ごさなくてはならなくなって、そうすると腹も減るし この本の続きが読めなくなる。」

と、手に持ってる 天童荒太 の 家族狩り を、見せる。

「その本、読んでいるから、そんな発想したんでしょ。  大丈夫よ、 カンナはいくらなんでも殺人に使いづらいから疑われないわよ。」

「偽装かと、思われるかもよ。」

「滅多にできない体験で 良いかもしれないよ。 カツ丼とか食べさせてもらえるかも。 それって本当なのかどうか、お母さん知りたかったの。」

「やだよ。 知りたければ自分で犯罪を犯してきなよ。」

「空くん、 普通に 『お母さん、一緒に出かけたいんだ。 行ってくれない? 本も持っていって帰りにサイゼでピザでも食べてこようよ。』 と かわいらしく言えないの?」

「いやー、 難しい年頃だから。」

時計を見る。  お昼どきか。  今日はお昼ご飯 作るのサボりましょう。

海にももちろん声をかけて、 自転車でホームセンターに行き、帰りはちょっと足を伸ばして少々リッチなピザ屋さんに行きました。 
もちろん三人とも本を持って行き、そこで二時間位、過ごしました。

「袋を縫わなくちゃならないし、雲行きが怪しくて洗濯物が気になるから帰ろう。」


道具も揃えたし。 袋も縫ったし。 明日は (あれがない、 これがない) と騒がずにゆったりとした、夏休み最終日を過ごせそうです。
明日は、24(Twenty four)の 続きでも観ようかな。

夕方から雨です。
明日も雨かな。
夏休み最後の一日は晴れてくださいね、と雨雲の向こうに隠れている26夜月にお願いしました。

「お母さ〜ん、たいへーん」

「どうしたの? 海ちゃん。」

「上履きがきつくて足が入らないよー。」

「えー!」

「あ、俺のもだ!」

うっそ〜!!

家族狩り
家族狩り
posted with 簡単リンクくん at 2005.11.20
天童 荒太著
新潮社 (1995.11)
通常2-3日以内に発送します。
posted by tsukikohime at 22:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 天童荒太 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする