2006年06月11日

6月11日物語 : 明日を見よう


あれ? 感じない・・。
不感症になってしまったかしら。

オンライン書店ビーケーワン:花まんま

花まんま  朱川 湊人  2005.4  文芸春秋

朱川さんの書くノスタルジックなホラーの雰囲気、好きなのに。
せっかくの直木賞受賞作品なのに。

だいたいどれも似たような時代(昭和30年前半)設定で、 下町を舞台にして、 というのにちょっと飽きてきてしまったかな。

花まんま は大阪の下町が舞台で、 前に紹介した  かたみ歌 が東京版ということになりますね。
で、かたみ歌のほうがずっと良かったと思うんですがね。 それより良かったのが 都市伝説セピア です。 

ああ、そうそう、白い部屋で月の歌を も良かった。 この一冊はちょっと他のとは雰囲気が違うような気がします。

まだ読んでいない さよならの空という一冊は朱川さんテイストと違うそうですが、成功してるのでしょうか? そのうち読んでみたいと思います。

一年に朱川さんを4冊も5冊も読んではいけなかったのですね。
そんなにしょっちゅう、 昔を懐かしんでばかりいてはいけなかったのですね。

今日や明日も見なくては。

しかし、これじゃあ、あとで記事を見てもどんな内容の本だったか自分でも思い出せないです。  そうゆう時は、ここに収められている短編のタイトルだけでも列記しておけば良いのです。  わりとタイトルで内容を思い出せるものなのよね。

「トカビの夜」 
「妖精生物」  
「摩訶不思議」
「花まんま」
「送りん婆」
「凍蝶」 

ああ、 「トカビの夜」 が一番良かった。 
 
posted by tsukikohime at 18:02| Comment(2) | TrackBack(0) | 朱川湊人 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年04月17日

4月17日物語 : 中華そばの味


昭和30年中頃から40年半ばあたりの東京の下町とその町に住む人々が生活に必要なものをほとんどそこでまかなえるアカシア商店街を舞台にした連作短編。

ホラーといっても朱川さんの作品はいつもノスタルジックな匂いが強くて、 その雰囲気を楽しんでしまうので怖さが半減します。  それがもう朱川さんの作風として安定してきてますね。  ずっとこの路線で行くのかな。  
私はこの作風がとても好きですが。 
忘れかけた遠い昔を思い出すと、 誤った記憶や都合の良い誤解や幼い思い込みも混ざって、 理屈では説明できない不思議な現象が確かにあったような気がしたりします。
ホラーとノスタルジックは意外と相性が良いのかもしれませんね。

都電が近くを走るこの町のアカシア商店街には、レコード屋、 ラーメン屋、 酒屋、 スナック、 ガラス屋、 肉屋、 古本屋などが並び、 近所には覚智寺という小さな寺があり、 読みながら誰もが自分の知っていたそれぞれの懐かしい町を思い出すのではないでしょうか。

オンライン書店ビーケーワン:かたみ歌  かたみ歌  朱川 湊人 2005.8  新潮社

そこに長く、 または青春の一時期を過ごした人々の物語ですが、 どの話にも古本屋の主人がキーパーソンとして出てきます。
この町の覚智寺というお寺には、 昔からあの世と繋がっているという噂があり、 確かにこの町には不思議な出来事が多く、 町の人のよき相談相手となっている古本屋の主人も、実はあの世に行ってしまったある人に逢いたくて覚智寺のあるこの町に流れてきた人だったのです。

子どもを置いて駆け落ちしてきた男女が仲睦まじくひっそりと暮らしていたが、ある殺人事件がきっかけとなり、 子どものもとに帰っていくことになる 「紫陽花のころ」。 

古本屋に置いてある1冊の本を介して文通していた相手が、実は何十年も前にフィリピン沖海戦で亡くなっていたその本の著者だったという 「栞の恋」。

など7つの短編が入ってます。

この本を読んでいると、中華そば食べたくなります。  麺が細めで真っ直ぐで(もしくは少し縮れてて)、 醤油味、 メンマとチャーシューとほうれん草とナルトとネギと海苔が入っている、 あれ。
 
posted by tsukikohime at 23:12| Comment(4) | TrackBack(0) | 朱川湊人 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月20日

3月19日物語 :セピアの頃


18日の土曜日は海ちゃんの卒業式でした。 
そのあと謝恩会があり、別れがたくてまた場所を移してお茶会をしたり、いつまでも何枚も記念写真を撮りあったりで、お母さんがたはもう疲れてへろへろ、スーツはしわしわ、化粧はよれよれなのに、子供たちは元気いっぱいではしゃいで離れがたくて。

卒園、卒業の節目節目の度にひとつ大きな仕事を終えたような、ぐんとまた年を取ってしまったような。

埼玉や千葉、神奈川から通ってきていた子たちも多く、 卒業してそれぞれまた別の私立中学に行ってしまうので、同窓会くらいでしかもう会えないかもしれませんね。  

今日は朱川湊人の 都市伝説セピアを。

この中には5つの短編が収められています。
  アイスマン
  昨日公園
  フクロウ男
  死者恋
  月の石
 
          
オンライン書店ビーケーワン:都市伝説セピア  都市伝説セピア  朱川 湊人著  文芸春秋
 
独立した5つの短編ですが、 どれも1970年頃に幼少期を過ごしただろう主人公たちの話でした。 
あの頃は。 当時は。 と、セピア色の写真を眺めるように当時の記憶が現在の主人公に影響している物語です。

特に好きだったお話、 昨日公園

公園で親友のマチとキャッチボールをして遊んだ日の夜、主人公遠藤の家の電話が鳴った。 マチが公園の帰りに車に轢かれて死んだという知らせだった。

親友の死にひどくショックを受けた遠藤の足はその翌日、 自然と昨日マチと遊んだ公園に向かう。 遠藤の足元にボールが転がりそれを拾い上げると昨日マチと遊んだボールだったことに気付き不思議な気持ちで公園の中に足を踏み入れる。
すると、同じ場面が繰り返されるのだ。
マチは生きていて昨日と同じ会話を始める。
遠藤は気付いた。 これは、どういうわけだかわからないがタイムスリップしてしまったのだ。
親友を死なせないで済むかもしれないと思った遠藤はマチを家まで送って行くと提案した。 無事家まで送り届けてほっとした遠藤だったが、その夜また電話が鳴る。 親友のマチが車に轢かれた。 家に帰ったあとおつかいに出て轢かれてしまった。 それも昨日はタクシーだったのに今度は巨大なダンプカーだ。

翌日、公園に行くとまたタイムスリップ。 
今度こそ、親友を死なせまいと頑張る遠藤だったが、マチは別の事故でまた死んでしまう。 
もう一度、 明日こそ死なせないぞ。
ところが、その願いと遠藤の東奔西走もむなしく、マチは何度も死に、 死ぬたびに前よりも悲惨な死に方になり、マチの家族までも巻き込まれて死んでしまう。

どうしたらいいのだろう。
マチにこれ以上、苦しい思いをさせたくない。
何度も何度も死の苦しみを味わせたくない。

小学生の少年の胸は痛む。
生きていることの意味なんてわからないし、 人生の仕組みもわからない。
けれど、 ただ一つだけわかったことがある。 
死はまるで駄菓子屋のくじ引きのように、 ある日突然当たってしまうものだと。
・・・だまって従う以外に道はないのだ。

遠藤は大好きな親友のマチのためにどんな辛い決心をしたのか。

だいたいご想像できるとは思いますが、 読者の想像をはるかに越えたものを書いてくれるのが 朱川湊人のすごいところ。 
一回、泣かせただけでは済みません。
それから30数年後に、大人になった遠藤が我が子と同じ公園で遊ぶのだが。

っと、ココまでですね。 これ以上は話せない!

ホラーというジャンルに組み込まれやすい朱川さんですが、この作品やこの本だけでなく、郷愁感漂うセピア色の遠い昔にタイムスリップしたようなせつなさを残してくれる作品が多いです。

セピア色の遠い昔があるということは、それだけ長生きしているという事なんでしょうけど。

小学校を卒業したあの子たちも30数年後には今日の日はセピア色に見えるのでしょうか。  

卒業 おめでとう。
posted by tsukikohime at 00:27| Comment(4) | TrackBack(0) | 朱川湊人 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年11月02日

11月2日物語 : 人生最高の日に


あー、 こんなに幸せなら、もう死んでもいい・・・。


と、思ったこと、もしくは思わず口からこぼれたことは ありませんか。


あるでしょ?  一度くらい。  安易に言っちゃう人もいますけどね。

贔屓にしている球団が優勝した時とか、 あこがれのアイドルと握手できた時とか、 片思いだと思っていた相手から愛の告白をされた時とか・・・。

こんな幸せな日は、 生まれて初めて。  この幸福な気持ちを抱えたこの瞬間で、時が止まってしまえばいい・・・。


そんな死んでもいいくらいに最高なときに、 望みどおり、死なせてくれる町があります。


そこに引っ越せば、 町の人たちも皆とっても親切でやさしいし、 新参者の貴方を町あげて暖かく迎えくれます。

町の少し高台に広場があり、 そこには鉄柱が一本、立っています。

だいたい2メートル30センチほどの高さの鉄柱で、 途中からL字に曲がっています。 その部分はだいたい1メートルほどで、 先端は輪になっています。

そこに頑丈なロープを結ぶのです。

ロープは、 いつでも誰でも自由に使えるように広場にある倉庫に用意してあります。



「これ以上の幸福は望めない。 今日が我が人生、最高の時。」 と思うのでしたら、 

もう、 どうぞ、 どうぞ って感じで 誰も止めないし、 ちゃんと事故や他殺ではなく自分の意志で決行したということを証明してもらう為にも、 町内会で推薦された人が立ち会ってくれます。

あと、ちょっと面倒かもしれないけれど、 遺書に ある文を書かなくてはならなくて、 まあ、短いからすぐ書けると思うのですが、


願わくは 花の下にて春死なむ、 そのきさらぎの望月のころ


と、 西行法師の作った歌を、自分の遺書に書き足せば良いだけです。

これが、書いてあるかないかで、 町の人たちが出してくれる祭壇の飾り方などお葬式の形式も変わってしまうので、 今までお世話になった町内会の皆さんの為にも、 残された家族の為にも、 幸せのおすそ分けをするつもりで、面倒臭がらずに書いておきましょうね。

自分の名誉の為にもなるのですから。  

だって、 人生最高の日を自ら永遠に封印した素晴らしき記念日なんですから。


別に 「いや、まだまだ、私にはこれ以上の幸せな瞬間が未来にあるに違いない。」

と思うのでしたら、 実行を先に延ばしてもかまわないんです。


だけど、 最高に幸せ! と思った瞬間や、 最高にどん底・・ と思う瞬間って、 本当にこれが最高だと思ってしまっているから、 なかなか、冷静に先のことまで考えが及ばなかったりしちゃうんですよね〜。  「今がその時」 なんて思ってしまう。

冷静になりましょうね!


参考までに、 その町の名前は、 「久々里町(くぐりちょう)」

山に囲まれた小さな町でして、まだホームページとかは設けてないようです。

この町について詳しくお知りになりたい方は、  朱川 湊人(しゅかわ みなと) の 鉄柱(クロガネノミハシラ) という小説をお読みください。

 

朱川湊人さんて、今年の春に 花まんま で、 直木賞を受賞した人です。

出す作品出す作品、 色んな賞の候補作品として挙げられ、実際、賞をどかどか獲っていく作家です。

これからもどんどん秀作を書いていきそうで、楽しみです。

鉄柱 の話は、 第10回日本ホラー大賞短篇賞を受賞した 白い部屋で月の歌を といっしょに文庫に納められています。  

私としては、 白い部屋で月の歌を より、 鉄柱の方がおもしろく読めました。 こうね、ちょっとブラックなのってね、好き。


そりゃあね、 嫌なこともいっぱいあるかもしれないけれど、 良いことだってまだまだいっぱいあるかもしれないじゃないですか。  ないかもしれないけど。  生きてみなきゃわからないです。

神様がおいでおいでと言うまでは、 もらった命はきっちり生かさせてもらいましょう。


オンライン書店ビーケーワン:白い部屋で月の歌を白い部屋で月の歌を  朱川 湊人〔著〕
posted by tsukikohime at 23:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 朱川湊人 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする