どの町にもある忘れ物保管室。
そこではあらゆる忘れ物を見つけることができる。
傘、 コンパクト、 水筒、 カスタネット、 血圧計、 貞操帯、 臍の緒・・・。
そして根気よく探索すれば、 必ずおとぎ話の忘れ物が見つかるのです。
この世にありながら、 亡きものと等しくなってしまうそれらの “おとぎ話たち” を集めて 「忘れ物図書室」 を店の奥に作ったキャンディー屋の店先からこの物語は始まります。

おとぎ話の忘れ物 小川 洋子文 / 樋上 公実子絵
2006.4 ホーム社
これは 「大人の絵本」 です。
樋上久美子(ひがみくみこ) の絵をモチーフに小川洋子 が創作した耽美で怖いおとぎ話。
この本を手に取ると、 読み出す前にまず視覚に訴える何枚もの絵を眺めてしまう。
好む好まないにかかわらず色彩も鮮やかでエロティックな印象が強すぎて、 薄い本なのになかなか読み出せなかった。
どうしたって白黒の文字より、絵のほうが目立ってしまうのは仕方のないこと。
やっと今日一気に最初から最後まで読めました。
絵が強すぎて小川さんの文章や紡ぎだす物語が負けてしまうのではないかと怖れていたのだが、結果杞憂に終わった。
読みながら何度も絵をめくる。 絵を確かめる。 確かめてしまう。
不思議なことに実はあまり好きではなかった絵が魅力的に見えてきた。
先ほどまで気づかなかった絵の中の少女たちの息づかいが、 小川さんの言葉によって聞こえてくるようになる。
知る人は知る、 好きな人は好きな絵なのかもしれないし、 わたしもどこかで何度か目にしたことのある絵だったが、 あまり興味を持てなくてじっくり見たことがなかった。
樋上久美子さんには失礼な話ですが(ファンの方にもね)、 わたしにとってはこの絵こそ 小川洋子さんの力量によって、 「忘れ物保管室」から見つけ出され 「忘れ物図書室」 に移されたものの意味を持ってしまいました。
小川洋子さんの力に驚くばかり。







