2006年11月10日

11月10日物語U : これからは武士よねっ


えへへ、読んじゃいました。 国家の品格。 ベストセラー!

オンライン書店ビーケーワン:国家の品格

国家の品格  藤原 正彦著  2005.11  新潮社

これ、売れるの当然。 仕方ないです。 だっておもしろいもの。
そして読んだ人は隣りの誰かに薦めちゃいますよ。
「読後の感想、意見はいろいろあるだろうけど、 まあ、とにかく読んでごらんよ」 ってね。

大人同士でも、 親子でもいくらでも語り合えちゃいます。
私も中3の息子とは、かなり熱く語り合っちゃいました。

第二章  「論理」だけでは世界が破綻する

第三章  自由、平等、民主主義を疑う

第四章  「情緒」と「形」の国、 日本

第五章  「武士道精神」の復活を

今の教育、学校、親のありかたについての考え方や、 「自由、平等、民主主義」というなんだか物事をごまかして言いくるめたような抽象的な表現について、 藤原さんにびしっと解説してもらえて、 すっきりしたし。

やっぱ日本人は「武士道」よねー!なんて思ったり。
うんうん、「国語」を大切にしましましょうよ、 本をたくさん読むことを薦めて子どもたちの「情緒」を育てましょうよ、と思ったり。

ちゃんと「世界史」も「日本史」も勉強しようよ。 中学高校でやらないで、いつやるのよ、ほんとにもう! ちゃんと高校でやったはずの私でさえ、あんまり身についてないんだから、 学校でやらなかったらなーんにもわからなくなっちゃうよっ。

なーんて私が口角沫飛ばしてあれこれ言ってみても誰も耳を傾けてはくれないから、藤原さんの口角沫飛ばしを聞いてみましょう(口角あわとばしっっ!てイキオイなんですよ)。

読んでみて反論したくなる部分もあるかもしれませんが、 それを誰かと論じ合うのもまた楽し。

そこらに置いておくとつい何度も何度も読んでしまう本です。


藤原正彦さんが「数学は美しい」とテレビで話しているのをみて、 小川洋子さんが 「博士の愛した数式」(clickで記事に飛びます) を書こうと思いついた、なんてちょっとイメージがどうしてもつながらないほど、 激しく自分の意見をがんがんおっしゃる人。

ベストセラー拒否症気味の私も、ああ、これははずさず読んでよかったーと思いました。
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2006年11月01日

11月1日物語U : 華恵

オンライン書店ビーケーワン:本を読むわたし

本を読むわたし 華恵著 2006.7 筑摩書房



前回は少し先の未来をあれこれ想像して、空が落ちてくるのか、花が降ってくるのかなんてことを案じてたりしてましたが、少し気分を若返らせてみましょう、と手に取った一冊。

著者は1991年生まれの15歳の女の子、華恵(はなえ)。 
いっきに若くなりました。

華恵は10歳からモデルをし、 12歳で女優デビュー。
2003年には 『小学生日記』 を刊行し、 よしもとばなな、 重松清、 石田衣良などから高く評価されるほどの文章力です。

この本は、 ただの読書感想文ではありません。 
4歳から14歳までに出会った思い出の本、というよりもその本を見るとたくさんの思いが甦ってきてしまう本たちのことを書いています。

父がアメリカ人、母が日本人のミックス(ハーフではなく、ミックスという言い方を華恵はお兄さんから教わってとても気に入ってます) の華恵は両親が離婚する6歳まではニューヨークに住んでいました。 
ニューヨークで育ったプレスクール時代。 
ニューオーリンズで初めて会ったグランマ。
両親が離婚した6歳の夏。
母の実家のある福島県の祖父母との会話。
石田衣良原作のドラマに出演したときのこと。
日本の小学校での友達。
中学受験の塾で知り合った友人やそのお父さん。
気になる山下くんのこと。
 
さまざまな人種や宗教観や世代や環境の中で育ち、 自分というものと他者というもの、そこに生まれる人間関係やそれぞれの感情などをとても冷静に見つめ、 考え戸惑い不思議に思って生きてきたからこそ、 豊かな情緒が育ったのだと思います。
そして華恵のそばにはいつも本があり、 それらは幼いころからずっと華恵を支え、 さらに彼女を情緒豊かに育てたようです。

文章力もさることながら、 豊かな感受性、素直な思いや言葉に、 わたしは感動。
15歳の華恵の書いたものを、 どれどれどんなもんかな、なんて少し高いところから見るような気持ちで読み始めたわたしはちょっと恥ずかしくなりました。
 
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2006年05月07日

5月7日物語 : 父への恋文


(子)ときて、(妻)ときて、(父)ときました。 たまたまです。

父は八甲田山死の彷徨、 孤高の人、 アラスカ物語、 武田信玄などの著者新田次郎、 母は流れる星は生きているで、ベストセラー作家になった藤原てい、 次兄は数学者でエッセイストの藤原正彦、という才能あふれる一家の末子で長女の藤原咲子による 父への恋文 新田次郎の娘に生まれて

 オンライン書店ビーケーワン:父への恋文  山と渓谷社

「チャキ、 お父さんが死んだらね、 作家新田次郎はこんなふうにして書斎で原稿を書いていたっていうこと、 ちゃんと覚えていて、 しっかり作品に残すのだよ」 
果たして本当に約束が守れただろうか。 と、あとがきで結んであるが、さてどうでしょう。  

命を削るようにして作品を次々と生んでいった新田次郎の様子はよく伝わってきたし、 どんなに父が咲子を可愛がり愛し、 咲子がどんなに父を尊敬し愛していたのかが書かれてはいたのだが。

12歳の時に、母の書いた「流れる星は生きている」 の中の 「咲子はまだ生きている。 咲子がまだ生きている。 でも、 咲子が生きていることは、 必ずしも幸福とは思えない・・・。 背中の咲子を犠牲にして、 ふたりの子、 正弘、 正彦を生かすことが・・・」のくだりを読んで、 ショックを受けて自殺未遂を図った時の遺書のところなど涙してしまったが、 随所随所に母への不信感を持ち続けている恨み辛みの文章が少々多すぎるような。 
会う人会う人から 「君があの(リュックの中に一年近くいた)咲子ちゃんなの?」、 「君があの(乳の代わりに草の汁や泥水で育った)咲子ちゃんなの?」、 「君があの(兄たちの命と引き換えにされそうになった)咲子ちゃんなの?」 と言われ続けて彼女の人格は破綻寸前に追い込まれ、それを未だ引きずっているのは仕方の無いことだと思います。
自分の存在をも脅かす辛い事実を知ってしまって、 父からの愛情だけが彼女を生かし続けた光だったのでしょうね。 

ベストセラー作家になりその印税で吉祥寺に一軒家を建てた妻、満州から3人の子どもたちを無事全員連れて引き揚げて生還してきた強い妻に対して驚愕と感謝と尊敬の気持ちを持ち頭が上がらない父に、 咲子はおもしろくない思いを抱えている。
気象台の仕事をしながらも作家業を続け、 筆を折ることをしなかったのは、 男としての屈辱があったからではないだろうかと咲子は書いている。

作家としての新田次郎、 父としての藤原寛人を書くことは成功していると思うが、 これは、藤原咲子が抱えている苦しみ、トラウマからの脱出のための気持ちを整理するための書でもあるな・・と思いました。
 

うちの咲子はかわいいな
おめめぱっちり母さんに
ほっぺはばら色父さんに
ほんとに ほんとに かわいいな

こんな自作の歌を歌って、 顔を見るたびに「咲子はいいこだ、 かわいいな、いいこだな」 と繰り返す父に咲子は子どもの頃から、嫁に行っても、そして父の死後もずっと恋に似た感情を持ち続けているようです。 そして彼女にとっての最大の恋敵は母・藤原ていだったのではないでしょうか。

 
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2005年12月05日

12月5日物語 : ブスのくせに!


「ぶ・・」

「え?」

「あ、あんたなんか、 ぶ、ブスのくせに!!

と、言われたことがかつてある。

場所は東京駅の山手線のホーム。

夕方だった。  けっこう人がいた。

彼女は私の友人で、 そのセリフを吐いたあと、 ツカツカツカとヒールの音も高く去っていってしまった。  美人は怒った顔も美しかった。

私は、 大きく 「わたしはブスです。」 と書いた看板を持たされたような状態で、 多くの人の視線を痛いほど感じながら、 恥ずかしさで泣きそうだった。


女が女に そんなことを言う場合・・・ お察しの通り、 オトコがらみである。


彼女は学生のかたわらモデルをやっていて、 美人だ。

瞳が茶色で髪も生まれつき明るい茶色で、大きなウエーブのパーマをかけている。 
目鼻立ちくっきり、化粧ではっきり、背も173センチくらいあった。

誰もが 「ハーフなの?」 と聞いてしまうくらい 西洋的な美しさを持った人だった。

そんな彼女と肩を並べられるような(もちろん身長のことではない)私ではないのだが、 その時のオトコが悪かった。


彼はイギリスから2週間前にやってきたばかりの留学生で、 それはそれは日本に憧れてやってきていた。

彼は日本の女性に対するかたくなな思い込みがあったのだ。

髪も瞳も黒。 髪型は日本人形のようにまっすぐで長くておかっぱ。

日本人の女の子はみーんなそうなふうだと思っていたらしい。  いったい何を資料としていたのだろう。

ところが来日してみると、 そんな女の子は滅多にいない。


「すっごーーくカッコいい留学生が来たねえ!」

「へえー。」

「つきこ、 知らないの!?」

「うん、 知らなかった。」

「えー、 見てごらんよ、 ね、ね、」

と、乗り気ではない私を彼が居るであろう学食に連れて行った。

「ほらほら、 あそこ!」

彼は慣れない手つきで、うどんと格闘している最中だった。

その彼がふと顔を上げた。  目が合った。

彼は、 まるで懐かしい故郷の友人にこんなところで出会った! みたいな顔をして満面の笑みで走ってきた。  本当に走ってきた。

走ってきて 友人と私の前で「はあはあ」と息をつきながら、 私の手を取って 「見つけました!」 と言ったのだ。

隣から友人の 「え・・?」 という声が聞こえた。


自慢じゃないけれど、私は 「美人だね。」と言われたことはない。

でも、 国も違えば、 ’美’ の定義も違うのだ。

彼女は ハーフのように美しかったが、 彼の国では茶髪も茶目もウエーブのかかった髪形も日常の景色だった。  

当時、私は学内でも珍しくパーマもかけておらず、茶髪にもしていない まるで日本人形のような真っ黒でストレートのロングの髪型(髪型だけだってば!)だったのだ。


彼女は1ヶ月くらい口を聞いてくれなかったが、 ある日 「ボーイフレンドを紹介したい。」と言ってきた。


「彼ね、 芸能人なの。 だからいつも彼のマンションで会うのよ。」 と言ってわざわざ新井薬師のマンションまで連れて行ってくれた。

ハンサムではないけれど愛嬌があってけっこう売れているタレントだった。

踊ったり歌ったりしている姿は毎日のようにテレビに映っていた。

ひとしきり、 私の前でいちゃいちゃを見せてくれたあと、 「テレビの仕事があるから」という彼と三人でタクシーに乗り、 私と友人は東京駅で降ろしてもらった。


友人はすっごくご機嫌だった。 山手線のホームに向かう途中、イギリス人留学生の話になった。

まずいかなと思ったが、 芸能人の恋人もできたことだしと私は気を緩めてしまった。

「付き合ってるんでしょ?」

「え、 付き合ってないよ。」

「え〜 どうして?」

「だって、 私、ちゃんと付き合っている人がいるもの。  それに金髪で青い目って苦手なんだもん。 同じ外人なら黒っぽい髪で茶の瞳のほうがいいな。」

「ふ、ふったの!?」

「振ったというか・・うん。」

「なんで!?」

「だから、 私にはボーイフレンドが・・」

「な、なん、生意気よ!!」

「え?」

「あ、 あんたなんか・・・」


というイキサツでした。  

今でも あのタレントがテレビに出ているのを見ると、 「ブスのくせに!!」と言われたことを思い出す。  最近ありがたいことにあまりテレビに出なくなったが、 禁煙ぱぴぷぺぽ とかなんとかというCMに出ていたなあ。

彼女と私では、 本当に月とすっぽんくらいの差があったのだ。   

ブスのレッテルを貼られたまんま山手線のホームに取り残された私は、出来るものなら本当にすっぽんになって顔を甲羅の中に隠してしまいたかった。 

恥ずかしかった。  まだうら若き乙女だったのだ。  確かに傷ついたけれど、 今思えば裏表のあまりないまっすぐな性格な人だったなあと思う。 
  

この本は ↓ まったくこの話とは関連がありません。  思い出してしまっただけ。

ちょっとお下品に笑えるエッセイです。   ちっとも本の紹介になってないなあ。。

目次だけでも

 第一章  優等生の密かな愉しみ

 第二章  性にめざめてよかですか

 第三章  COME, COME! GOGO!

 第四章  それでもブスになりたいあなたへ



ブスのくせに!
姫野 カオルコ著
新潮社 (2001.4)
通常1-3週間以内に発送します。



 



 
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2005年11月28日

11月28日物語 : 生理的嫌悪感


生理的にダメ・・・ という言い方を女性はよくします。

「一度ダメと思ったらもうダメ、 生理的に受け付けない。」 と。


文章については、 生理的とはあまり言わないのかな。

この人の文章は私、ダメ、 「性に合わない」 とか 「肌に合わない」 とか言うのかな。


初めて 宮部みゆき を読んだときは 「あ、だめ。 この文体、性に合わない。」 と思ったのですが、 何年かしたら平気で読めるようになっていて、 やはり本との出会いはタイミングだなと感じました。  だから、一度挫折したものでも数年経ってからチャレンジしてみるようにしています。


林真理子 の文章は、 私は別に大丈夫です。  文章は大丈夫なんだけれど、 女の描き方が私にはダメ。

ほとんど女が出てくる話なのだから、 ではほとんどダメじゃないかと言われれば、 あ・・そうかもしれない。

でもその中でも林真理子が描くセックス関係の話がダメ。
ほとんど男と女の話ではないかと言われれば、 あ〜そうでした。

それに、 誰の小説だろうと食べ物の扱いがひどいともっとダメ。

未知(未体験)の 性描写でも、 未知(未食)の 料理でも許容範囲というものがあります。


先日、極め付きに わー、 これダメ〜! というのを読んでしまいました。

セックスと食べ物がからんでしまった話でした。


林真理子の 「白いねぎ」 という短篇だったのですが、 さっさと人にあげるだか売るだかしてしまったので手元にありません。


でもだいたい覚えています。

女には愛人がいてその愛人にはもちろん家庭がある。

今夜、その愛人が来るから デきるかなーと期待していたのに 「家庭の用事」かなんかで来れなくなってしまう。

女は愛人という立場やデきなかったことに対して、悶々イライラうずうずしてしまう。

で、台所に置いてあった長ねぎを使って自分を慰める。

へ!? ねぎ?

ねぎ?

やだー!!  と第一の拒否反応。  一瞬、「辛み成分が沁みそう・・。」 と変なことを思いましたが。

なんで、 ねぎ?  いや、別にそれがきゅうりだろうがじゃがいもだろうが玉ねぎだろうが、私は嫌なのです。  食べ物をそんなふうにそんなことに使うだなんて。

話には聞いたことがあるけれど、 いや、いつかエッチなビデオで観たこともあったけれど、 さすがにねぎは・・・。

いや、 だから、 ねぎじゃなくても、だめです!


その続きがまた怖い。

翌日やってきた愛人に、 いつものように酒の支度をする女。

てきぱきと台所で料理を作る。  女は料理が上手いようだ。

なんだったか忘れたけれど、 小料理屋で出てきそうな肴を作るのだ。

そのねぎを使って。


ねぎをまな板にのせ、 お酒を飲んでいる男をチラッと見て 「女って怖いのよ。」 と声に出さずにつぶやく。 


ダブル生理的嫌悪感でした。

少々官能的に と副題が打ってありますが、 私からすれば 猟奇的 でした。


コレにその話、入ってます。  写真がなかったの ↓

 
短篇集
短篇集
posted with 簡単リンクくん at 2005.11.28
林 真理子著
文芸春秋 (1988.12)
通常1-3週間以内に発送します。
  
posted by tsukikohime at 23:18| Comment(6) | TrackBack(0) | はひふへほ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月30日

9月29日物語 : やれやれ

文字通り 「寝食忘れて」 最後まで読まずにはいられない本に ここ一ヶ月程、会えない。  

そんな予感がするのは何冊か手元にあるのだが、恐ろしくて手をつけれない。

宮部みゆき や 乃南アサ や 奥田英朗 の ぶ厚い長編だ。  もしも、ものすごーくおもしろかったらどうしよう。 そうなると読み切るまで眠れなくなってしまう。 奥田英朗の最悪 で 懲りてる。

しっかり睡眠を取って朝6時に起きて朝食とお弁当を作る。  家族を起こす。  家族のリズムを乱してまで本を読み込むわけにはいかないのだ。  明日は絶対お昼寝が出来るぞ! と 確実に予定が組める日が来るまで徹夜はできない、 長編に手を出すのは、こわいこわい。

だから、短篇や中篇から先に読んでしまう。


駅の傍の大型スーパーの駐車場に車を止め、近くの銀行をいくつか回る。 歯医者に行く。 スーパーに向かって戻る。 その途中にあるチェーンの古本屋に入る。

「そこよ!」

どうしてだろう。 毎日忙しいのよね、と毎日2時間は昼寝できるという友人にこぼしたら指摘された。

「なぜ、入る? 素通りしなさい。 素通り。 見ない。 振り向かない。 入らない。 とにかく買い物途中で本屋には寄らない。 寄るとついお茶もしちゃうんでしょ。 だからよ。」

うーん、と私は考えた。

「わかった? 出来る?」

「あのね、 歩いてたら 500円玉が落ちているのを目の端で見つけちゃったらどうする?」

「そりゃあ、拾うわ。」

「でしょ? 歩いてたら本屋さんがあるのを見つけちゃうの。」

はーっとため息をついて彼女は言う。

「でも、家にもまだ読んでいない本がいっぱいあるんでしょ?」

「だけど、お金持ちだって500円玉が落ちてたら拾うと思う。」

彼女は私に ”有能な主婦の有効な時間の割り振り方” についての指導をするのはすぐに諦めたようだ。

仕方ない。 私自身、とっくに諦めているのだから。


店に入ってすぐに知らない作家の名があったので、手に取ってみる。 ぱらぱら。 いいかも。

レジに行く。 100円。 

ほら、5分で出てこれた。 私にだって出来るんだから。 30分や1時間居る事だってあるのだから今日は上出来。

スーパーの食料品売り場に行く。 なんだかすごーく混んでいる。  今夜は何にしようかな。

広い売り場の端から歩く。

サンドイッチ用のパン。 ハム。 チーズ。 ヨーグルト。 
鮮魚売り場で、アサリとタコと未処理のイクラ。
冷凍食品のコーナーで、 うわー、すごい人、人、人・・、 冷凍のブルーベリーを籠に入れる。 
上を見上げると 「冷凍食品50%オフ!」 の 紙が 揺れている。 
そうかー、 だから混んでいるのね。
レジも長蛇の列だ。

バッグの中のお財布を出そうとしてさっき買った文庫本も取り出した。 目次とか表紙を見るだけよ。

本多孝好 って知らなかったな。 MISSING
60ページ程の短篇が5つ入っている。
ひとつめの 眠りの海 というのは 第16回小説推理新人賞受賞作 だって。

列の動きを目の端で捉えながら サワリを読んでみる。

いいかもしれない!  自分の番が回って来た時には7ページ読んでしまっていた。

袋に詰め込みながら言い聞かせる。 冷凍食品を買ったのよ。 イクラの下処理に時間がかかるわよ。
まっすぐ駐車場に行く。 えらいえらい。

運転しながら、おやつと塾用お弁当と夕食の段取りを考える。  時間をうまく使ってこの本の続きを読む時間を作らなくては。

まず、鍋に水を張り昆布を入れる。 これはイクラの醤油漬けを作る時に合わせるダシ用。
ヤカンに水を入れ火にかける。 これは、イクラの下処理用。 
鍋に水を入れて卵を茹でる。 これは塾のお弁当のサンドイッチ用。 きゅうりを切ってハムも袋から出す。 パンにバターを塗る。 
きゅうりは、サンドイッチ用だけではなくタコとわかめの酢の物に入れる分も切っておこう。
イクラをボウルに入れて、50℃くらいのお湯で洗う。 そして筋を丁寧に取る。 これが30分位かかるのよね。 
あ、アサリもボウルにあけて塩水で砂抜きしなくちゃ。 それから、わかめも塩抜きしておこう。 ブルーベリーは子どもが帰って来るまでとりあえず冷凍庫に入れて、帰って来たら ヨーグルトと砂糖といっしょにミキサーにかける。 うーん、夕食のメインは何にしよう・・・

・・な〜んて考えながら運転していると危ないのよね。 

主婦が交通事故に遭うのって夕方が一番多いんですって。  「今夜のおかず、何にしようかしら。」 なんて考えながら歩いてたり自転車を漕いでたりして事故に遭うらしい。 
車の運転だって同じこと。 気をつけなくっちゃね。  

おっと、ガソリン入れてこなくちゃ。

いつものスタンドに寄ると、なんだかここも混んでいる。 

「はいはい、ここここ、こちらに止めて、はーい、オッケー、ストップ!」

読みたい。 のろのろと順番を待っている間、 窓を拭いてもらっている間、 ガソリンを入れている間、 4ページ読んでしまった。

お金を払う時になってやっと混んでいるわけがわかった。 今日は普段より リッター2円安いらしい。 それでも 1リッター、124円。  高くなったなー。  どこまで値上がりするのだろう。 地球環境保護と家計安泰と運動不足解消の為に、1人で行動する時は徒歩か自転車にしたほうが良いですね。

ガソリンスタンドを出る時に文庫本をバッグに封印した。  読む時間が出来るまでバッグを開けない。 見ない。 触らない。 思い出さない(これは無理)。


滞りなく一日の家事に区切りがついたのは 夜の12時半。  6時に起きるのだから普通は寝るよね。  でもちょっと普通じゃないから・・・。


著者は1971年生まれです。  心地よい透明感がある文章で読みやすかったです。 若い作家でたまに見かける ”村上春樹の子供たち” の部類に入るのかもしれない。 あまりにも村上春樹ふうの匂いが充満していて嫌になってしまう作家もいますが、本多孝好 は嫌になりませんでした。 軽いミステリーの要素も入っていて楽しめます。  この作品が初の短篇のせいか、(もう一歩。惜しいぞ、この表現。)と思うような文章もたまにあるのですが、きっと書くたびに上手くなっていくんだろうなという期待を持たせてくれる作家です。  この後に出た作品も読んでみたくなりました。

”村上春樹の子供たち” の部類の作家の中で、私がその著者の他の作品を読んでみる気が失せるか失せないかを決定するのは実は単純なひっかかりです。  

ある言葉を使ったか使わなかったか。
もしくは使ったとしても多用していないか、違和感なく使えてるかです。

その言葉は

やれやれ

「やれやれ」 を 使うと ぐっと村上春樹っぽくなります。

村上春樹の子どもたち は 「やれやれ」 を 多用する。  

「やれやれ」 を 使いたいが為だけに小説を書いたのではないかと思うほど。

そして、たいがいは失敗する。

村上春樹ほど 「やれやれ」 の 正しい居場所を知っている作家は他に居ないのではないかと私は思います。

だから初めての作家の作品を読み始めて、半ページもしないうちに これは 村上春樹の子どもたちの部類の人だなと気がつくと、 いつ 「やれやれ」 が 出てきてしまうのかとはらはらどきどきしてしまいます。  
けっこうおもしろいストーリーなのに、 間違った場所に 「やれやれ」 が出てきたり、多用されたりすると、もうそれだけでがっかりしてしまい、 すっかりその人の他の作品に手を出す気持ちがなくなってしまいます。

本多孝好 も 読みながら はらはらしてしまいました。
ストーリーがおもしろいからこそ余計に 「お願い、 『やれやれ』 を 使わないで。」と思いながら読みました。 もう今にも主人公の男の子が言いそうです。 言ってもいい場面が度々出てきます。 危ない危ない、いかにも言いそうです。  はらはらするストーリーではないのに余計な心配をかけます。  頑張れ〜。 使わないで〜。
  
とても便利で洒落た台詞。 『やれやれ』。  

あ〜、良かった。    とうとうこの短篇集の中では、 『やれやれ』 が出てきませんでした。

だから、本多孝好には期待して他の作品も読んでみます。 

もうひとつの短篇。  あともうひとつ。 と、夢中になって全部読んでしまい、もうすぐ2時。 
おかげで今夜は4時間しか眠れません。


今、うっかり使いそうになりました。 恐れ多いあの言葉。  
  
  




 
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2005年09月14日

9月14日物語 : 癖になっちゃう


あ、やっぱり
こんなふうに始めちゃうんだな。
いや 
確かに
頭にこびり付いてしまった事は認めるけど。
だけど
これは
作者をちゃかしているわけではなくだってそうでしょちゃかせるわけはないんだから

やだな
ほんとに
しろうとのくせに真似すること自体やな感じ
つまり
昨日読んだ原田宗典優しくって少しばかという中篇の話がこんな書き方だったのでこの
不思議な改行の独特のおもしろさをどうやったら伝えられるかななんて
思っていたのだけれどこんなふうに
こんなふうに真似しても
わかるかな伝わるかなもっと上手に伝える方法はないかなと
思いながら書き出したらほら
こんなに
なっちゃって少し
戸惑っているけれどなぜかな止まらない。

原田宗典の作品をこの作品から読み出してしまった人はどんな印象を持つのだろう。
幸い・・ 幸い、かなやっぱり
私は
人の短篇集とか海の短篇集とかから知ったので
ぞくっとして笑わせる不思議な短篇から好きになっていったから。
私だったらどうだろう。
初めて
読んだ
作品が
こんな
だから
こんなねへんてこな改行する文章だったらどうかなへんてこな
改行
だけではないのよね句読点が少ないことも特徴でどこで区切って読んでいいのやら。
好きになったかな。
3ページくらい進むまでわーっ読みにくいな止めちゃおうかなどうしようなんて思いながら読んでいたんだけど
あれはなんだろう原田さんのストーリーのおもしろさでついていけちゃったのかなそのうち
へんてこな
改行が
気にならなくなってまあストーリーが進むうちにへんてこな改行は少なくなってきたこともあるからかなうんそれもある。
でもほら
なんていうか
わかるでしょ?癖になっちゃってるの。
だけどこれ読みにくいよねほんとだって
プロが書いてるんじゃないし改行があメールの着信音困ったなキーを叩く指が止まらないでも
メール
気になる
なんて
思考が
あっちこっち飛んじゃってるのも
このストーリーの特徴なのって
説明する為に

そんなことも真似してみせてまいっちゃうなほんと言っておきたい大事なことはやっぱり原田さんてすごいなと思うこと。
で、なんだっけ。
そうそう
だからねつまりなんだっけ?
うんそうそう
癖になっちゃうの。
だけど技術的に磨かれた原田さんの文章ならともかくいやこういうのだめだなって思う人もそりゃあいるだろうけど原田さんの文章ならともかく
私が
こんなふうに
書いちゃって
きちんと
読んでくれた人がいたら申し訳ないというか
ああ
ありがたいですすごくそうそうなの。
ありがとうございます。
ああと言ったのは、
これ
なんだか
本当に癖になってるなって思ったんだけどどうしてなんだろうねってさっきも言ったっけ?
これを最後まで読めた人は
これ
ってこの私の文章ね
きっと
こんな風に書いてみるとわかると思うけど
癖に
なると思う。
実際試してみて。
でも
やっぱり
一回限りねこの書き方
だって
読みにくいですごめんなさいそれにね実害もでちゃったの。
話し方もこんなふうに今日はこんなふうになっちゃって
子供達から
どうしたのお母さん話し方変だよ句読点がなくってなんて言われてしまって実際句読点なしで話すのって結構大変だけどこれまた
やってみると
おもしろい。
いつものブログは一時間前後それ以上の時もあるけど掛かるのに
これ
あっという間にすらすら書けてしまってほらやだなさっきごめんなさいって
言ったばかりなのに
どうしよう
止めなきゃほんと。よし!なんて声に出して止めますよし!
実際言ってみたのよし!って声に出すとちょっと恥ずかしいねだけどそうでもしないとこれキリがないもん。
最後に
もう一度声を大にして伝えたいのは
私のせいで原田さんを
まだ読んだことがない人が
読む気を失くしてしまったら困るなとだっておもしろいんだよ足を引っ張るつもりなんてぜんぜんないしこういうへんてこな書き方は多分優しくって少しばかだけだと思うし私全作品読んだわけじゃないから保証はできないけど。
真似してるってさっきも書いたけど真似なんておこがましいって
書いているうちにこれ真似じゃないなあーどうしようもっともっと本当に良いの原田さん真似なんてできない

だんだん
自己嫌悪
あれ
そう
書き終わらなくちゃ。
よし!なんてもう一回声に出しちゃったりして2回目でも恥ずかしいな。
明日は
普通に書かなきゃ
だけど
あれ
さっきから
だけどとかでもとかどうしようとか言い訳がましいそんなことばかり言って嫌んなっちゃうな。
だけどどうしよう明日も止まらなくなったらこの書き方まさかまずいよそれ誰か止めて。

オンライン書店ビーケーワン:優しくって少しばか
オンライン書店ビーケーワン:人の短篇集
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2005年09月13日

9月13日物語 : 湯豆腐


「秋が毎日寄せてくるね。」

「秋ってさざなみのように来るのね。」

「つきちゃん、手をつなごうよ。」

「ダメよ。 ここは吉祥寺だもの。 こちらが気が付かなくても見られてるかもしれないし。」

「新宿でもダメって言うよね。」

「渋谷でもよ。」

「僕たち、どんなふうに見えるかな。 夫婦に見えるかな? 見えないよな。」

りょうちゃんは、ひとりで答えを出している。

「不動産屋さんと物件を案内してもらっている主婦。」

「そんなふうにも見えないさ。」

「知らない人は、ヒトのことなんか気にしないと思うわ。 ただ、知っている人に会ったらね・・」

「豆腐、食べに行こう。」

「なーに、それ?」

「つきちゃん、 豆腐みたいだからさ。」

「どうして? 私は色白でもないし、豆腐みたいにふっくらした感じじゃないのに。」

「こないだ、 飲み屋で湯豆腐食ってたら、 『つきちゃんは豆腐みたいだな。』って 思ったんだ。」

「お醤油かけて、食べたの?」

「美味かった。 美味くてあわてて食ったら口の中、火傷した。」


私達は東急デパートのエレベーターに向かった。

一階からエレベーターに乗るとあとからあとから他の客が乗ってきて 私達は箱のすみのほうに押されていってしまった。

あ。 知っている人。

りょうちゃんに目で教える。

彼女は 上の階数表示を見上げていて後ろを振り向く様子はない。

りょうちゃんが私の手をとって自分の後ろに回してぎゅっと握る。

私は素知らぬ顔で、彼女の後頭部を見てた。

指をいじりまわして遊んでいる。  ずるい。
今りょうちゃんは いたずらを遂行中の子供みたいな顔をしているのに違いない。

知人は4階の婦人服売り場で降りて行った。
階数が上がる度に乗る人より降りる人が多くなり、エレベーター内がすいてきた。

私はりょうちゃんの手をそっと解くと身体を離した。


レストラン街のフロアに降りて 『梅の花』 に向かう。 豆腐料理の店だ。

人気があるらしく たくさんの女性客が店の外に用意された椅子に腰掛けたりその周りに立って順番を待っている。

「全員、女性ね。 カップルなんて居やしないわ。」

「大丈夫?」

「誰かに会わないかってこと?」

「うん。」  

「(兄です)って言うわ。」

「(弟) だろう。」

「(叔父)って言うわよ!」


りょうちゃんが店の受付の女性のところに行って何か聞いてくる。

「あと、20分待つって。」

「ね、一階下に書籍売り場があるの。 待っている間、行かない? 10分くらいなら大丈夫でしょ?」

「席が用意されたら携帯で知らせるから 1人で行っておいで。」

「りょうちゃんは行かないの?」

「うん、 文字の洪水は 今は、 俺は・・。」

「そう・・・。 じゃ、ひとりで行ってくるね!」


りょうちゃんは、冗談ばかり言ってやけにはしゃいでいる時と沈んだ横顔を見せる時との入れ替わりが 激しすぎる。
自分では気が付いてないのだろう。
会う度に変わるのではない。  
たった数時間ほど一緒にいる中でくるくる変わるのだ。


まだ 会社は 大変な時期を脱していないのだろう。

まだ ”落し物” は 見つけていないのね・・。


下りのエスカレーターに向かって歩いている時、 背中にりょうちゃんの視線が張り付いているような気がして振り向いたが、りょうちゃんは椅子に腰掛けて俯いていた。

俯いているのではない。  あれは うなだれているのだ。  軽く広げた足の間で手を組みまるでお祈りをしているように。

・・本当に ”叔父さん” って 呼んじゃうぞ。


あったあった。

探していた本はすぐ見つかったので、清算を済ませると他の本を見渡すこともせずすぐりょうちゃんのところに戻った。

居た!    りょうちゃんは、さっきと全く同じ姿勢で座っている。

「りょうちゃん!」

数人が振り向くほど大きな声が出てしまった。

りょうちゃんは 顔をあげると、じっと私の顔を見て そして角砂糖が紅茶の中で溶けていくように笑った。

「走ってきたの?」

「階段を走ってきちゃった。」

「ぜえぜえ言っているよ。 何を買ったの?」  と言いながら席を立ち 代わりに私を座らせる。

原田宗典 の 優しくって少しばか っていうの。」

「つきちゃんは 昔からよく本を読んでたな。 知らない作家なんてないんじゃないの?」

「とんでもない! あの頃私が読んでいたのは 教科書に載っていそうな古典的なものや翻訳本ばかりよ。 最近の作家って あまり知らないの。 原田宗典 は最近の人じゃないし、この作品もとても古いものだけどね。」

私は話が止まらなくなった。  りょうちゃんは 私のほうを見てたまにうなずいてはいたが、声だけしか届いていないだろう。

言葉の意味なんてきっと脳の表面をなで通り過ぎて行っているだろうことは、わかっていた。

「彼の短編が好きなんだけど、もう少し長い中短編くらいのも読んでみたかったの。 この表題作の中にりょうちゃんと昔よく聴いた キース・ジャレット の ケルン・コンサート のことが少し出てくるんだって。 だから、読んでみたいなって。 でね・・・」

その時、案内係りの女性に 順番が来たことを告げられた。

りょうちゃんのすかすかの目を見つめ続けなくて済んで 私はほっとした。

 
案内された席は個室だった。

「個室を頼んだの?」

「ああ。 誰にも顔を合わさないから落ち着いて食事ができるだろう。」


自分でこの店を選んだくせに、 運ばれてきた料理を食べながら りょうちゃんは文句を言う。

「豆腐はさ、 こうあれこれいじられるより 豆腐のまんまがいいよ。」

「湯豆腐とか、冷奴とか? でもこうゆうのも私好きよ。 美味しい。」

「湯豆腐がいいな やっぱり。  つきちゃんみたいだから。」


「さっき、つきちゃんが走ってきただろう? ぜえぜえ言いながら。」

「うん。」

「すごく嬉しそうな顔しているから、俺もすごく嬉しくなった。  お目当ての本を見つけたから?」

「ううん。」 

足が痺れそうだったので重ねていた足の先の上下を変える。   

「ちゃんと居たから。 ちゃんとりょうちゃんが、 あそこに  居たから。」

りょうちゃんは、驚いたような目で私を見て、すっと息を吸うと急に箸を置いて下を向いて黙ってしまった。

どうしたの?   だって、本当にそうだったんだもの。

私も箸を置いた。


配膳係りの人がノックをして 次の料理をテーブルに並べると私達の様子など全く目に入らない様子で、その料理の説明をする。


トン と小さな音を立てて引き戸が閉まっても まだりょうちゃんは下を向いたままだ。

「お料理が冷めちゃうよ。」

「つきちゃん。 ・・・・・。」

「え? なあに?」

下を向いたままで なんだか声がくぐもっていてよく聞き取れなかった。

「なんて 言ったの?」

「俺・・。  死ぬ時は・・」

「死なないで。」

「つきちゃん の 角に頭ぶつけるのが いい。」


『わたしの角ってどこ?』  考えても考えても そんな つまらない切り替えししか浮かばなかった。

そう聞いたら、りょうちゃんは 少し笑ってくれるだろうか。

オンライン書店ビーケーワン:優しくって少しばか優しくって少しばか 原田 宗典著
posted by tsukikohime at 23:19| Comment(0) | TrackBack(0) | はひふへほ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月16日

8月16日物語 : もっともっとえっち

 
朗読者(ベルンハルト・シュリンク)を読む。
 本の帯に出版社の誰かの手によるヘッドコピー(惹句)が書いてある。 数人の著名な作家によるこの本の賛辞が書いてある。
 本屋さんで偶然手に取った人がそれを読んで買ってみようかな、と思わせる為よね。  30字程で本の良さを人に説明するのって難しいことなんだなあ。 著名な作家を使うというのは、その作家を信頼してこの人が薦めるなら期待していいかなって思わせるコトよね。 それはある程度、成功するかもしれない。 でも 人の感想って、やっぱり人の感想。

 良い意味で裏切られた感じです。 読み終わってからあらてめて惹句と数人の作家の推薦の言葉を読んでみると、「こんなもんじゃないでしょー!」 と・・・。  30字程度で本を賛辞するのって大変なお仕事ねえ。 苦労したと思います。 

 『「イングリッシュ・ペイシェント」の A・ミンゲラ監督が映画化!』 の言葉が一番、 んー、なるほどー、是非観たいぞー・・・でした。 でも読んだからこそ納得したのですが。

 本はどうしたって、自分で読むしか方法ないですね。 
 売れた売れたの言葉に釣られちゃうのって、何を食べさせるかわからないけど人がいっぱい行列作ってるから後ろに並んじゃうみたいな感じです。 ”当たり”もあるかも知れないけど。 さくらが並んでるかもしれない。 (疑い深いわたし。)

 自分に気持良いことは、自分の身体が一番良く知ってます。 味覚も音楽も読書も、それから、あの・・・、ほら、ね。 


 最近、友人に「つきこさんってえっちだったのね」 と言われます。

 え、私ってえっちだったの・・・?

 「サコー、 ブログ読んだ何人かの友達から、えっちだって言われた。」 

 「つきこへの理解が深まって良かったわね。」

 「気持良いことが好きなだけなのに。」

 「そういうこと言うからよ。」

 「みんなは気持良いこと好きじゃないのかしら?」

 「好きに決まってるじゃない。」

 「なーんだ、みんなえっちなんじゃない!」

 食べることにも音楽聴くことにも本を読むことにも、みんなえっちになりましょう! ね。
 そして自分に一番しっくりくる気持良いものを見つけましょう。

 私はまだまだもっともっとえっちになります。

オンライン書店ビーケーワン:朗読者 朗読者 ベルンハルト・シュリンク著 / 松永 美穂訳
posted by tsukikohime at 23:41| Comment(2) | TrackBack(0) | はひふへほ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月01日

7月31日物語 : やっぱり、いつもの BITCH

 
 『どう、元気? 主婦業、頑張ってることと思います。 息抜きに一杯いかがでしょうか?』

 「すみませ〜ん、 3時間ほど、お暇を取らせて頂きます〜。」

 自転車を駅方面に走らせる。 

 「こんばんわー、暑いねー。」

 「おー、きたきた、こんばんわー、 何、飲む?」

 「やっぱり、いつもの BITCH。」

 この店のオリジナル。 微妙なネーミング。
 
 赤提灯と縄のれんがさがっているが、カウンターだけの店内の壁には、ミックジャガーのポスターが貼ってある。 吟味して仕入れた旬の材料を使って作られた肴は、来る度に楽しみだ。

 小、中学校からの同級生が、この街には未だ大勢残っている。 親の商売を引き継いでそのまま地元に住んでいる者だけでなく、結婚しても、未婚でも、一度他所に住んでも、ここに戻ってくる人が多い。 だから、年に一度の同窓会も、集まりはすこぶる良い。 わざわざ同窓会をしなくても、しょっちゅう、すれ違ったりするのだが、やはり、時間と場所を決めなくては一同に会するのは、難しいのだ。 
 今日のように気の合った数人で飲むことも、私たちだけでなく、行われているらしい。

 「飲みに出るの久しぶり。今年の初めにこのメンバーで此処で飲んで以来だわ。」

 「鮭の白子を、おかわりばかりしてたよね。」

 「だって、炭火で炙って すごく美味しかった。」

 マスターがちらっとこちらを見る。 普段から愛想がないが、出した肴に、いつまでも箸をつけない客を見つけると、さらに不機嫌な顔になる。

 こういう昔の同級生、それも男友達と飲むのは、本当に楽しい。 女友達とは、また違った会話が楽しめる。 私のような専業主婦にとっては、日本経済の真っ只中で戦っている男性の会話は、日経を読むよりリアルで、とても刺激的で興味深い。
 
 もちろん同年齢であるが、それぞれ職種も違うし、彼らも同じ職場の人間と仕事の続きのようなお酒を飲むより、楽しいのではないだろうか。
 
 私はもっぱら聞き役、質問役だ。  
 専業主婦の日常の話など、特におもしろくもないだろう。
 議論が白熱してくると、私はひとり、勝手に注文して食べてばかり。
 独身貴族ひとり、バツイチひとり、妻子持ちひとり、 そして、私だ。 男性三人におばさん一人お邪魔させて頂いております。 


 同じ時を同じ教室で学び、同じ校庭で遊んだその後の、それぞれの人生。
 
 同じ本を読んでも、全く違う感想だ。  

 本の話題になった。 ようやく私も口をはさめる。 
 この席で貸し借りし、自分では決して手に取らなかったであろう本にも出会える。 

 最近、この四人で共通して読んだものは、 服部真澄
 龍の契りから始まり、鷲の驕りGMOの三冊。 私は、著者が女性とは、途中まで知らなかったので非常に驚いた。 こういうものは、男性しか書けない世界だと思い込んでしまったのだ。 香港返還に隠された謎、ハッカーがからむ犯罪とビジネスの裏、遺伝子組み替え作物ビジネスを操る巨大企業の闇。 それぞれ三冊が扱う題材は、男性作家の手に寄るものと思ってしまった。 
 でもまあ、考えてみれば、山崎豊子とか居ますものね。

 「男性だと思ってたのー?」

 「だって、名前が紛らわしいんだもの。」

 「鷲の驕りで、吉川英治文学新人賞取って、結構有名だよ。」

 「すみませーん、無知な専業主婦で。 お恥ずかしい。」

 言い訳になりますが、書評や、何々賞を取ったとか、そういう情報は、わざと取り込まないようにしています。 

 何かのきっかけで私のところにふと巡ってくる本を、まっさらな気持で読みたいな、という思いがあって。
 でもそんなことにこだわっているから、なかなか新しい作家を発見できないし、未知の素晴らしい小説をどんなに逃していることか。

 だからこういう友人、とっても大切で感謝しております。

       


 
posted by tsukikohime at 23:03| Comment(0) | TrackBack(0) | はひふへほ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年07月27日

7月27日物語 : XXXX って書くのもいやなの

 
 合宿に行く空を車で駅まで送って、海を起こして、一緒に朝ごはん食べて、お弁当作って塾まで送る。
 海は、この夏は、天王山だ。 6年生の夏期講習は、日曜とお盆休み以外、毎日7時間近くの授業がある。 送ってくる親達の悲壮な顔つきとは裏腹に、子供たちはとっても元気。 まだ現実をよく把握していないのか、家に居るより、塾に居るほうが親に『勉強、勉強』と言われなくて,友達にも会えて楽しいのか。 海にいたっては、自分の偏差値より12も下の学校を親子で気に入ってしまった為、気楽なもんだ。

 「いってきまーす!」
 「いってらっしゃーい!」


 さあて。
 もう、嬉しくなっちゃう、この天気! 
 家中の布団を干しまくり、 林間学校から持ち帰った海の大量の洗濯物を洗う。家の洗濯物を洗う。 シーツも洗う。 布団カバーも枕カバーも洗う。
 畳もフローリングも拭き掃除。 
 台風のせいで、もう家中ペタペタ湿った感じがして、すごく嫌だった。

 暑い

 でも、布団も洗濯も干すのにベランダを行き来するので、エアコンは、我慢。 太陽の熱で、家中の湿気を乾燥しなくちゃ。
 そうだ、子供たちの部屋も掃除しちゃおう。

 空の部屋は、すごく散らかってる。

 「合宿中、空の部屋の掃除するから、お母さんに見られたくないものとかあったら、処分するとか、引き出しに鍵かけてしまっとくとかしなさいね。」

 「わかった。」

 もう、ぜーんぜん、片付いてないじゃない。

 私は掃除機を持って、空の部屋に入った。 
 学校からもらったプリントや、返された小テストとか、去年の教科書とか、ノートとか、ポテトチップスのカスが残ってるお菓子の袋とか、飴の袋とか・・・。
 
 ゴミ箱があるのに、これじゃあ、部屋まるごとが、ゴミ箱じゃない。

 あー、エアロスミスのCD、ないないって騒いでいたけど、やっぱり、空が持ってたんじゃない。 
 あ! やだー、原田宗典の短編集、海が買ってきたのに。 私も海も、短編が得意なこの独特の(ハラダワールド)が好きだ。 
 読みたくて探してたのにー。ぞくぞくっと怖い話が多いけど。

 ベッドや机の下の本や、お菓子の空き袋などを、一旦、空の机の上に上げる。

 え

 いや、まさか。

 掃除機のスイッチを入れる。

 え

 私は固まってしまった。

 あれ だ。  あいつ だ。

 あとずさる。

 でも、放っておくわけにはいかない。 行方がわからなくなったら、今夜、安心して眠ることも出来ない。

 私は、掃除機の長いノズルをアレの方に伸ばした。

 膝ががくがくする。

 表現したくない嫌な音がして、アレは掃除機に吸い込まれていった。

 吐きそう。

 でもどうしたらいいの。 スイッチを止めたら、アレが掃除機の中から這い出してきてしまう。 

 どうやって抹殺すればいいんだろう。
 学生時代、男の子から聞かされた恐ろしい話を思い出してしまった。

 「マージャンしてたら、XXXXが現れてさー、そこらにあった楊枝でぐさっと背中さしたんだよ。」 (やめて〜、そんな話) 
 「で、そのまま朝までマージャンして、みんなで朝方に雑魚寝して、夜またマージャンしてたらさー、 背中に楊枝さしたまんまのXXXXが、歩いてんの。もうすっかり忘れてたから、驚いたよ。 すんげー、生命力だよなー。」

 耳を塞いでるのに大きな声で話すから、全部、聞いてしまった。 


 結局、一時間以上、スイッチをつけっ放しにしておいた。 窒息してくれないだろうか。
 
 「礼は倍にして返すぜ!」と昨日、空が言ったことを思い出した。



  

 
 
posted by tsukikohime at 20:27| Comment(0) | TrackBack(0) | はひふへほ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする