2007年09月06日

9月6日物語V : ちゃりんこで太宰

長かった夏休みも終り、台風の季節がやってまいりました。
長かった・・。

夏休み最後の一週間になって中2の海ちゃんが
めんどーな宿題をふたつも思い出しました。
ひとつは国語の読書感想文。
もうひとつは地理の宿題で、
どこでもいいからどっか地理っぽい調べ物して
レポート提出(手描きの地図、及び写真付き)。

ど〜しよう、おかあさん
って、やるっきゃないでしょ。

読書感想文は数ある推薦図書の中から
太宰治人間失格

なぜかというと、 今年の集英社文庫の人間失格の表紙の絵が、デスノート小畑健だったから。
それだけの理由です。
りっぱな理由です。



地理の方はというと、三鷹市にしました。
なぜかというと、近いからです。
時間がありません。

そして、三鷹といえば太宰治の足跡だらけ。
レポートのタイトルは三鷹市の太宰の足跡

ひじょうに安易ですが、時間がありません。
海ちゃんとちゃりんこで出発です。

半日くらいで済んでしまいました。
太宰さんは三鷹市内のひじょーに狭い範囲でしか行動して
いなかったみたいです。
ありがたいことです。

DSC01465.JPG妻や子らと住んでいたところも三鷹市ですが、
太宰治が通いつめた小料理屋で2階を仕事部屋としても
使っていた千草という店の
跡も駅から徒歩1分の場所。


k;その斜め前に太宰と心中した山崎富栄が借りていた部屋があった
野川家(現在は葬儀社の寮だそう)があり、


その北側に玉川上水が流れ、ふたりが入水した場所も
駅から徒歩5分ほど。

 
DSC01459.JPG入水したすぐそばに玉鹿石という
大きな石が置いてあり、それは太宰を偲ぶために
太宰の故郷青森県金木町山から持ってきたものだそうだ。

また駅から西に3分ほど行くと、仕事部屋として一時借りていた
中鉢家の跡があります。

みんなビルになってしまって昔を偲ぶというわけには
いかなかったのですが、ひとつ偲べそうな場所がありました。

三鷹駅から徒歩10分 −ここが一番遠いのですがー
太宰が眠る禅林時です。

DSC01475.JPG憧れの森鴎外と同じ寺がいい
と生前語ってたそうで、確かに斜め前に森鴎外(森林太郎)の
お墓もありました。
8月の末、森さんのお墓はちょっと荒れた感じでしたが、
太宰治の墓所には、缶ビール(半分くらい中身が残ってる感じ)
と、お線香の変わりに煙草が数本置いてあり、
2,3日内に誰かが参りに来たのだなという新しさでした。
缶ビールに煙草。
ほほー。


さて、 「人間失格」は、わたしも読みました。
ある男の手記をある小説家がひょんなことから手に入れたという
ことになっていて、ほとんど本文はその手記なのですが、
自伝的小説と言われているように、そのある男っていうのが
どうも太宰自身のようです。
とことん嫌な奴に書いてあります。
そしてとことん嫌な奴なのに、そんな自分が
けっこう好きなんだろうなあと感じます。
情けない嫌ったらしい奴なのに、
女にはけっこうモテちゃう、いやーまいったなという・・
・・
「人間失格」を読んで感動して泣く人も居るというのに、
昔は読んで自殺をした若者が居たらしいというのに。
自分の読み方に太く強く生きてきた我が人生を
思いました(現在なお進行中)。


暑かったね、なつ。



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2007年04月29日

4月30日物語U : わたしにもできる?

オンライン書店ビーケーワン:あなたにもできる悪いこと

あなたにもできる悪いこと  平 安寿子著  2006.7  講談社

健康食品、腰痛防止のサポーターやマッサージ器具、英会話の教材、化粧品、シロアリ駆除、
ソーラーシステム、幼児用CD・・・

桧垣はセールスマン。

それを買えば、これがついてきます。
アンケートに答えれば、粗品を差し上げます。
一本で二本分の効果があります。
期間限定お試しサービス中です。
お得です。 経済的です。

原価率の低い粗悪品を売りつけたときの快感は、いってみれば
暑い日に飲む生ビール。

でも、一ヶ所で長続きしないので、いつもお金に困っている。

そんな桧垣の腕を見込んでぜひ立ち上げたばかりの自分の会社を手伝って
ほしいと、高校時代の同級生、時任に誘われた桧垣。

最初の3ヶ月は売れても売れなくても基本給は20万出すの言葉に乗っかって
働きだした初日に、時任が逃げた。

残された時任の愛人らしき秘書(とてつもなく無愛想)と手を組んで
(半ば脅されて) 次々と詐欺まがいのことを始めるのだが・・。

6つの連作短編ですが、ひとつの話を読み終わっても
休憩を入れたくないほど、テンポのある文章とおもしろさ。

なめらかなトークで目先の欲をつついてやれば、
人はあっさり騙されるそうですが、 
この本もつかえる場所なくなめらかな文章で、
するする読みきりあっという間に娯楽の時間を甘受できました。
文字だけで娯楽をしようという欲張りな本読み人間をつつく
コツを熟知してる〜。
いちだんと腕を上げた?
タイトルもいい。
タイトル見ただけで、わたしは“読みたい欲”をそそられました。
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2007年04月25日

4月26日物語U : 明日、月の上で

オンライン書店ビーケーワン:明日、月の上で

明日、月の上で  平 安寿子〔著〕  2002.11  徳間書店


わたしはストリッパーです。 田舎の小さな温泉町で 「見せても触らせない本格派」 
の矜持(きょうじ)を貫き、過ぎしよき昭和の匂いを残す最後のストリッパーといわれています。

―と、これが出だしの一行目。

主人公のトビ子が、ストリッパーではないのですよ。
大好きなブンちゃん、 どこかへ行ってしまったブンちゃんを捜し求めてたどり着いたのが、中国山地の西のはずれにある霧舟温泉。
その霧舟温泉でブンちゃんのお姉さんがラーメン屋をやっているという。 
他に身寄りのないブンちゃんは、きっといつかそこに現れるだろう。
ブンちゃんに会いたい!

一途で健気で一生懸命なトビ子。

26歳になっても他人の言い種にいちいち反応して喧嘩腰になるトビ子。

騒動好きで何でも首を突っ込みたがるお祭り好きなトビ子。

霧舟温泉でストリップ小屋を経営する元全共闘の“おかあさん”や、 ストリッパーのマリアさん、 ストリップ小屋で働く人々、 ラーメン屋をやっているブンちゃんのお姉さん。 そのお姉さんのお姑さんや、土産物屋のコウばあさんなどひと癖もふた癖もある温泉街の人の中でいろんな騒動に首を突っ込むうちに1年2ヶ月も居着いてしまったトビ子。
愛しのブンちゃんのことはどうなっちゃったの? 
と心配していると、いきなりブンちゃんが放浪の旅から帰ってきました!!

さあ! どうなるのでしょう!?

続きは来週のお楽しみ!!

挿入歌は、石川さゆり、都はるみの叙情あふれる演歌数曲と、ジョンレノンの「スターティング・オーバー」、そしてアダモの「明日は月の上で」でした!

なんてね。 
続きを書いたりしませんからね。
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2006年07月18日

7月18日物語U : 雨、続きますね


「あんたはいいわよ。 お帰りただいまって言い合う亭主がいる。  子供の成長を見守る仕事がある。  わたしには、 何もないのよ。  食べて寝て、 生活費稼ぐためにまた起きて働いて、 死んでいくだけよ。  それだけの人生で我慢しろっていうの?」

と叫ぶ 42歳のシングルキャリアウーマン、 並河志津子。

とは言っても、 そこそこ人生を楽しんでいらっしゃる。

そんな愚痴が似合うようなヒネタ性格でもないし。

あけすけで隠し事のできない性格で、 過去の失敗や恋愛を誰彼なしに話してしまうし、周りは振り回されながらも志津子のことを放っておけないし、 姉御肌で困っている人を見るとどーんとお金や時間や人脈を使って助けてあげてしまう志津子にはまた友人が倍々に増えていく・・・。

そんな志津子を友人、 部下、 昔の恋人、 かつての恋のライバルたちが語る。

読み進むにつれエピソードも増え、 がちゃがちゃどたばたしているだけのように見えた志津子の魅力が見えてきて、 途中からは、 うーん、 なんてかわいい女性でしょう! と思わされるのだけれども。

オンライン書店ビーケーワン:なんにもうまくいかないわ

なんにもうまくいかないわ  平 安寿子(たいらあずこ) 2004.11  徳間書店

ラブコメ映画みたいでしたね。
深く考え込む必要のない本でしたが、 いま、とくにそうゆう軽いのを読みたかったわけではなかったみたいです、わたし。

だいいち、 「なんにもうまくいかないわ!」 と叫ぶようなことってないです。

なんでもうまくいってるともまさか思わないけれど、 いろいろ上がり下がり登り下りがあるものだし、 晴れの日もあれば雨の日もある。
そもそも何かをするときに 「楽しみたい」 とは思っても、 「うまくいくように」 という発想ではない。  
「楽しめない」 とわかっていることでも、 通らなくてはコトが進まないならモクモクと片付けるし。
楽しさの中にはつまらなさも隠れているし、 つまらないと思っていたことの中にも楽しさは潜んでいる。
・・・と書いていて、 
ふっ 長く生きたなと、 感じました。 
これでいいのか。  たぶんいいのでしょう。
また別の時にあらためて考えてみよう。


この志津子さんを主役とした5つの短篇のほかにひとつ全然別の短篇 
「亭主、 差し上げます」 というのが入っていて、 これはひじょうにおもしろかったです。
 
本気か冗談か(多分、半分本気、半分冗談)、 亭主の浮気相手をうまくはめてちょうどいらないと思っていた亭主を罪悪感とともに、 そして被害者顔で慰謝料をもらって持っていってもらうと助かるわ〜、 なんて話は、 そこかしこでよく耳にするので、 参考例としてオトモダチ(男性も女性も)にこの話、薦めてみようかしらん。 なんて。

新聞の天気予報の絵には、 全国的に9割以上は傘マーク。 
金曜日まで傘傘傘傘傘。
でもまたそのうち晴れるもの。
posted by tsukikohime at 18:04| Comment(7) | TrackBack(0) | たちつてと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月24日

5月24日物語 : 雷、ちょっと怖いです


凄かったですね、雷と雨。
ヒョウまでバラバラと降ってきて子どもたちと丸い氷の粒を拾いにいきました。
さっと玄関を開けて植木鉢や塀に乗ったヒョウをつかんでバッと家の中に入り、 どれが一番大きいかなんて。  中1の娘と中3の息子と私とで。 ずぶぬれになって。 なにをやっているんだか。

鳥たちもびっくりしたのか、 木陰に隠れていればいいものをちゅくちゅくひよひよぴーと飛び回っていました。 あんな小さな体にヒョウが当たったら痛いじゃないですか。 脳震盪を起こしちゃいますよ。 早くおうちにお帰ンなさい。

ヒョウが降ったあとは雨もやんで、空気がすーっと澄んできて夕焼けも見えるかなと思っていたのですが、また降ってきましたねぇ。 雷もまた。
パソコンを使うの少し怖いです。

オンライン書店ビーケーワン:童謡集

童謡集  田河 水  文芸社  2006.4


9つの童謡をモチーフにした短編が9編。

童謡集◎目次

事始口上走書(ことはじめこうじょうはしりがき)
其乃壱 宵待草
其乃弐 かなりや
其乃参 トランプ
其乃四 今夜のお月さま
其乃五 イエス・キリスト
其乃六 夢見花
其乃七 お菓子の家
其乃八 正午
其乃九 月の砂漠


田河水さんってご存知ですか?  どなたでしょう?  私、知りませんです。

そもそもなぜこの本を図書館で借りてきたのか。

多分、表紙が美しかった、それだけのきっかけだったと思います。

とても古めかしい雰囲気の本ですが、 著者は1979年生まれ。 お若い方なんですね。

皆さまのおうちの近辺の空具合は大丈夫ですか?
ここらはちょっと激しいの。
落雷でパソコンが壊れやしないかと心配なぐらい。

では。
posted by tsukikohime at 20:15| Comment(2) | TrackBack(1) | たちつてと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月03日

10月3日物語 : 今日はこれじゃない


ココロの体調を量り間違えて、選本・選曲ミスすると大変なことになる。

本人のココロの体調が崩れているのだから、選本・選曲ミスするに決まっているのだ。

渦中にいるから、そんなことにも気づかない。

なのに、積極的にどうにかしようだなんてあたふたして大騒ぎ。

選んだり自分から動いたりせずに意思もなく向こうから転がってくるのをただ拾うほうが、かえって良かったりするものだ。

もしくは、眠って眠って時が過ぎるのを待つ。  

でもね、現代人は、眠って眠って・・なんて時間がないのだ。


だから、早く真っ当にならなきゃってじたばたしてしまうのだ。


ミスった。

辻 仁成 の 本を手に取ってしまった。

以前に いつか、一緒にパリに行こう  と、 サヨナライツカ と、 恋するために生まれた を読んで、この人の感性と表現は自分に合わないなと思っていたのに。

よっぽど イイオンナじゃなきゃ無理だ。  辻 仁成を読むと女としての自信が無くなる。
自分がすごーくイイオトコだと思っているから、すごーくイイオンナを求めているなーと読んでいて感じます。

愛の工面 は、女性の語り口の小説です。

主人公の女性は写真家です。

そしてページの合間合間に なぜか前の奥さん、南 果歩 を写した写真が挿入されています。
南果歩 とご夫婦だった時に書かれた小説なんでしょう。
化粧っけもなくパジャマ姿で髪をひっつめた起きぬけの格好のままでごはんを食べている果歩さん。
本棚の前で耳掻きをしている 果歩さん。
旅行先の海外での 果歩さん。
プライベートな匂いです。


娘の海が幼稚園の時、オープンスクールというものがあってたくさんの父母達が見学に来られる日がありました。
P.T.Aの役員をしていた私は、同じく役員をしていた男性とふたりで受付のお手伝いをしてました。

オープンスクールの時間も終わりに近づき新たに入ってくるお客さんもまばらになった頃、 その男性は入り口の方を見て

「つきこさん、 ほらほらほら。」 と 二人の女性のほうを目線で示しました。

「?」

「女優の・・」

「え?」

私は顔を見てもちっともわかりませんでした。

帽子を目深に被った小柄な女性と太った女性。  小柄なほうが女優さんなんでしょうが、目の前に来てもやっぱりわからない。

太った女性のほうが記名をして、女優は私の隣の男性を見ると 「あ・・」 という顔をしてにこっと笑い会釈をしました。 
二人が連れ立って幼稚園見学の人込みの中に入ってしまうと隣の男性が教えてくれました。

「南 果歩だよ。」

「ん〜、聞いたことあるような気がしないでもない、です。」

彼は あ〜、とういう顔をして、

「つきこさんは、僕のことも知らなかったからね・・」 と つまらなさそうに言いました。

「あ、それは、私あまりテレビを観ないからであって・・・」  しどろもどろ。

この一緒に役員をしている男性もテレビにしばしば出ている方なのですが、 申し訳ないことに私は知りませんでした。

テレビに出ている○○氏だと言われてもわからず、顔を見てもわからず、○○ちゃんのパパという認識しか持てず一緒に役員をすることになり、外で食事をした時などにいつも、

「ほらほらほら、あの人」

と指差されているのを見て、ふーん、やっぱり、そうなのかー というお粗末な認識。

その日も 「ほらほらほら・・」と 指差されていました。

「つきこさん、本当に知らないの?」

「名前は聞いたことあるけど顔は知りませんでした。 どんな映画に出演してるのかしら。」

彼も咄嗟に思い出せなかったのでしょう。

「作家の 辻仁成 の奥さんだよ。」

「あー! わかった! あの女たらしで有名な。」

「まあ、かなりモテるよね。」


当時、お子さんはまだ1歳くらいだったはずで、今から幼稚園探しをするなんて、教育熱心だなあと思いました。  別の幼稚園に決めたようです。

でもその後、離婚しちゃったのね。  で、今度は 中山美穂。  中山美穂はわかりますです。

辻仁成 は ロックミュージシャンであったり、詩人であったり、写真家であったり小説家であったりで、当時よりもますます売れてどんどん有名になってぷくぷくお金持ちになってパリで暮らして・・。

中山美穂とのお子さんはパリの幼稚園に通うのかな。


「強くならなければならない。 愛は何より強い心がなくてはならない。 どんなに揺さぶられても、 一本の巨大な樹木のように平静を保てなくては続かない。   私は強くなる。」 

と主人公の女性に語らせています。


この小説の内容よりも 無防備に写っている 南果歩 のプライベートな顔のほうが印象に残った一冊でした。
posted by tsukikohime at 13:33| Comment(0) | TrackBack(0) | たちつてと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月14日

8月14日物語 : 変態と呼ばれた文豪

 
 「マツも無事退院したそうだし、めでたしめでたし。」

 「ナカさんも無事離婚したし、めでたしめでたし。」

 「サコは?」

 「つきこは?」

 「ま、ふたりとも今日も生きてたから、めでたしめでたし。」

 「かんぱーい!」

 お互いあまり時間がないので、二時間だけという約束で飲んでおります。

 「読みたい本、山積みだねー。」

 「うん、あれも読みたいこれも読みたい、 時間は限られてるし。」

 「だから、一度読んだ本を読み返す時間がもったいない気がしちゃうけど、これが違うんだよね。」

 「時が経つと、違う味わいになっちゃってる。 それを発見するのもまた楽しいんだよね。」

 「この間ね。 谷崎潤一郎痴人の愛をもう一回、読み直したの。」

 「どうだった?」

  先日、知り合いのお嬢さんで大学二年になる子が、
 『痴人の愛を読んだけど、あれって、あの谷崎潤一郎って、作家じゃなかったら、ただのマゾヒストの変態だよね。 でもおもしろかったから完独したけど。』 と、話していました。
 
 本は、もう印刷物になって世に出たら一人歩きをするのだ。 誰の手に渡ろうが、読んだ人がどんな感想を持とうが、もう読む人のものなのだ。 こんなふうに読み取らなくちゃいけない、なんてことはないと思う。 

 で、私の感想は・・・ ウラジミール・ナボコフロリータを思い出しました。 
 面白かったか面白くなかったか、好きだったか好きじゃなかったか、同じ作家の別の作品も読んでみたくなるか、そうは思わないか。  私の読み方って単純です。 
 読書感想文を書くためにあれこれ考えながら読む必要がなくて、あー、良かった!と思います。 

posted by tsukikohime at 22:41| Comment(0) | TrackBack(0) | たちつてと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月04日

8月4日物語 : トウモロコシの皮を剥く

 
 トウモロコシが食べたい!  ガブリと食べたい。  子供たちに言われて、スーパーに来た。

 野菜売り場に向かった。 皮がついたままののトウモロコシが山になっている。 横に大きなダンボールが置いてあり、そこで、皮を捨てたい人は、自分で剥いていく。 

 「あら! こんにちは!」

 あら〜。  会いたくない人に会っちゃった。
 話が長いのである。 それも会う度に同じ話をする。  そして会った場所がどこだろうとする。
 最後に会った時は、デパートの化粧室で、 その前は、レストラン。 その前はどこだったかしら。 そして今日はトウモロコシ売り場だ。 大きな声で話し続け、人の迷惑になるから、せめて場所を移動しましょうと言いたくても、彼女の話には、区切りと言うものが無い。


 彼女は、いつもたくさんのどうしようもない悩みを抱えていて、いつも不幸で、世界で一番、ろくでもない亭主を持ち、世界で一番出来の悪い子供達を育てているのだそうだ。 誰よりも辛い思いをしてて、彼女にぴったりくる服はどこの店でもいつも売り切れで、どこの美容院も彼女に似合わない髪形を勧める。 そんな自分だとしても、こんなにひどい家族と暮らしているのはあまりにも不幸過ぎるではないかと、どうにか脱する良い方法はないだろうかと、いつもいつも悩んでいる。

 
 『ごめんなさい、今急いでて。』 なんて長い言葉を挟み込む隙間は全く無く、息継ぎの為に止まる一瞬を狙っているのだが、それが掴めない。 呼吸をしているのだろうか。

 彼女は、話し続ける。
 私は、トウモロコシの皮を剥きながら、相槌を打つ。
 
 やっぱり何度も何度も聞いた話だ。 それを、今初めて告白したかのように、熱意をこめて訴える。 何度も何度も話していて飽きないのだろうか。 本当に以前、話した事を憶えてないのだろうか。 何人の彼女の知り合いが、この話を聞いたことだろうか。 私は、7回くらい聞いている。

 私は、トウモロコシの皮を剥きながら、相槌を打つ。
 彼女は、話し続ける。


 息子の成績が悪くて、学校に呼び出されて、まー、驚いた、英語が学年で下から二番、どっか塾に入れたいけど、行きたがらないし、文系希望のくせに理系の学校見学に行くし、このままじゃ、どこの大学にも行けやしない、そんなんじゃ、夫のようになってしまうわよ、夫の稼ぎが悪くて、朝、燃えるごみと燃えないごみの日を間違えて違うゴミ箱を出していくようなそんな事さえきちんと出来なければ、きっと会社でもろくな仕事もできてないだろう、あんなに髪が薄くなっちゃってるくせにシャンプーをドボドボ使うし、あの人の使ったタオルが臭くて雑巾にもなりゃしない、息子はこの間、不良に脅されて財布を取られて、もう4回目よ、娘は、お父さんの入った風呂には入りたくないと毎日騒ぐくせに、だったら自分で洗えばいいものを中学生になっても自分のパンツひとつ洗わず、

 私は、トウモロコシの皮を剥きながら、相槌を打つ。

 これは、なんというか、ほら、あれ。 前に一度経験したような不思議な気分になってしまうやつ。 何だっけ。 そう、既視感!  んー、でも違うな。  彼女が話している内容は全く同じ話だけど、お互いの着ている服も違うし、場所も違う。 トウモロコシの皮なんて剥いてないし。
 既視感では絶対、ないわね。
 でもそういえば、既視感って、フランス語で、なんて言うんだったかしら。 心理学用語になるのかな、あれ。
 えーと。えーと。

 彼女は話し続ける。
 私は、トウモロコシの皮を剥きながら、相槌を打つ。

 えーと。 えーと。 あ。

 「デジャブ!!」

 「え」

 話が止まった。

 「洗濯の途中なの、さようならー!!」 私は、籠を抱えてレジに向かって走った。

 
 「お帰りなさ〜い。トウモロコシを買ってくるだけなのに、遅かったね。」
 「本、一冊、読めちゃったよ。」
 「良かったねー。 お母さん、疲れちゃった。 何、読んだの?」
 「これ。」

 あー、 邪眼鳥筒井康隆

 「デジャブじゃなくて、タイムパラドックスね。 おもしろかった?」

 「よく、わかんなかった。」

 「お母さん、なんで、トウモロコシ、12本も買ってきたのよ。」

 「よく、わかんない。  疲れちゃった〜。」



 

 
posted by tsukikohime at 20:38| Comment(2) | TrackBack(0) | たちつてと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年07月16日

7月12日物語 : 本のないコーヒーなんて…

食料買出し行って、銀行と病院寄って。 今日は外出日だから株は止めとこう。 でも画面だけは毎日チェック。 基本姿勢です。

でも、見ちゃうと、やっちゃうんだな〜。

<4753>ライブドアは、今日も盛況。 420円で1000株買って、監視してる時間はないから、423円で指値して出掛ける。

帰ってきてびっくり。 売れてたのはいいけど、終値が430円だって。 明日もこんなかな。いや、そろそろ ”返し”があるかもしれない。

買い物帰り、ドトールに寄る。 アイスコーヒーを持って居心地の良さそうな席を見つけ、座る。

バッグを探る。

 …ない。 本がない! 私はほとんどパニックになりそうなほど。

あー、車の中だ。 

本のないコーヒータイムなんて。

これはきっと、雨の日に一服しようとしたヘビースモーカーの人が、それと知らずに初めてスタバに入ってしまったような落胆と同レベルだろう。

 横を見る。 左側には誰も居ない。 右をみる。 スポーツ新聞をドバッと開いてるおじさん。
 私は裏からスポーツ新聞を覗き見する。 
 …おもしろくない。
 でも読んでみる。
 やっぱりおもしろくない。
 でも読む。
 …おもしろくない。

 おもしろくない!

 左側を見る。

あ! 永遠の仔。 天童荒太だ。

いつの間に来たのだろう。 持ち主をそっと見る。
 
暇を持て余している不動産屋の社長といった感じの40代半ばの男性。
彼は携帯をいじっている。メールを読んだり作ったりしているというより、画面をスクロールさせて時々どこかを押しては眺めたり。ゲームでもなさそう。

「その本、読まないなら、私に見せて。」

と言ってしまいそうな自分が怖い。

アイスコーヒーをずずっと飲み干すと 荷物を抱えて店を出た。

読みたい本が次々と待機していて 「もう一度読みたいな。」 と思ってもなかなかそれが叶わない。
でも永遠の仔 は二度読んだ。

天童荒太 は 二度読みたくなる。

永遠の仔 1
永遠の仔 1
posted with 簡単リンクくん at 2005.11.20
天童 荒太〔著〕
幻冬舎 (2004.10)
通常24時間以内に発送します。
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posted by tsukikohime at 23:35| Comment(0) | TrackBack(0) | たちつてと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする