2007年05月05日

5月5日物語U : 漢方から“みそあん”へと

昨日の本の続きのようですが、まあ、続きです。

そもそも漢方と中医学とは別もん。
どちらも元になっているのは紀元前3世紀頃から中国で体系化
された医学ですが、発展してきた道のりが違うのです。

「中医学」には、生薬を処方する中医中薬のほか、鍼灸、按摩、
薬膳も含まれ、西洋医学と共に公式の医学として採用されています。
でも、日本では中医師=お医者さんではないの。
日本には西洋医学用の国家試験しかないからね。
でも、鍼、灸、按摩は国家試験があるから医療行為ができます。
ややこしい。
でも中国政府が実施する国際的な検定試験に合格した中医師を、
日本では 「国際中医専門医」と呼ぶんだそうで。
さらにややこしい。

「漢方」は、中国から輸入され、
日本で独自に発展した中国系伝統医学のことです。
                 オンライン書店ビーケーワン:東洋見聞録

          東洋見聞録  
          川口 澄子画・文 / 幸井 俊高監修 
          2007.3  ピエ・ブックス

そんなことは、まあ、そのくらいにしておいて、その他の五臓六腑
とか陰陽五行説とかの話がイラスト入りで
わかりやすく解説してあります。

漢方や中医学に興味を持った著者が自らイラストを描いた
エッセイ。といっても著者はイラストレーターなわけで。

さらにもっともっと深入りしてみたくなった人のために、
中医学に関する著者のお勧め本がまたイラストつきで
紹介してあります。
たとえば

「漢方的スローライフ」・・幸井俊高
「食前食後 漢方の話」・・邸永漢
「胡蝶の夢」・・司馬遼太郎
「陽だまりの樹」・・手塚治虫

など、わたしは読んでみたいなあ。

今日は端午の節句
菖蒲湯に浸かったり柏餅を食べたりしましたか。
つきこさんは、菖蒲湯に浸かったあと柏餅を食べました。

菖蒲湯に浸かっている写真と柏餅の写真とどちらを掲載しようか。
考えるまでもなく柏餅です。
DVC100012.JPG

つぶあん好きなつきこさんですが、柏餅にかぎっては、
こしあんです。
みそあんはあまり好きではありませんが、
この「塩瀬」のみそあんは別格です。  
ピンクのおもちがかわいいっ。

ついでに「塩瀬」の本もご紹介。 わたしはまだ読んでません。
          オンライン書店ビーケーワン:まんじゅう屋繁盛記

          まんじゅう屋繁盛記
          川島 英子著 2006.5 岩波書店
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2007年05月02日

5月2日物語U : あいまいな日本語

うちのダンナ、左遷させられちゃうことが決まったの。

2ヶ月ぶりくらいに会った友人は、ウェイターが水の入ったグラスとメニューを
置き下げたその頭を上げる前に言った。

左遷。転勤じゃなくて?
ささやき声で訊き返したのに、彼女はひじょうに大きな声で答える。

うん、左遷。 すごーく遠い支店に。

で、着いていくの?

まさか! 子供が私立なのに。

さびしいじゃない。  あなた再婚してまだ3,4年でしょ。
下の子、まだ3歳くらいなのに。

うん、でも、仕方ないの。 彼、悪いことした結果の左遷だから。


わたしは彼女のダンナさんの顔を思い浮かべた。
彼女はわたしより7歳くらい下で、ダンナさんはそれより3歳くらい下。 
つまりわたしより10歳ほど下だったはず。
彼、つきこさんのことタイプで大好きなのよと、彼女と会うときはたいがいダンナさんもついてきた。 
そして、そのダンナさんがいつも車でわたしを送ってくれるのだ。
ダンナさんはきっといつも彼女と一緒に居たいからついてくるんだろうし、送ってくれるのもほんとうのところ彼女に頼まれてるのではないだろうかとにらんでいる。


どこに行くって? まだ決まってないんだっけ?

うーん、そうねえ、なんか日本でいえば網走とか? 
雪が深くて極寒のところとか、辺鄙で娯楽のなさそうなとことか。 

日本でいえばって、海外になるかもしれないの? 
ねえ、あなた、日本語なんか変よ。 イントネーションも。

海外だったらあ、政権が傾いて今にも紛争が起きそうなところとかかなあ。
  
夢見るような顔になって語尾が伸びてきた。
 
流れ弾とかぁびゅんびゅんきちゃうようなあぁ。
地雷もぉ埋められちゃってたりするようなあぁ。 
ねえ、どぉ〜おぅ?

どぉ〜おぅって。 変。 日本語変。 主語、どこ? 

わたしよ。 
わたしが彼の会社に手を回して、彼をどっか遠いところにやっちゃうの。

うっそ。

わたしのお金と人脈があればそのくらい簡単よ。 
ふふふ。


彼女は彼と結婚する前から超がつく資産家(親のではなく、彼女が築き上げた)で、
その上、まあ、書けないようなすっごいとこにあちこち顔が効く。
それでも、再婚してからの生活費は彼女は一円も出さず
彼の給料で全部賄ってきた。
前のダンナとの子の面倒も良く見るし、若いのにえらいダンナさん、
と思っていたんだけど。 

ちょっと浮気しちゃったらしい。 

だから、今日来なかったのか。
あのひとなつっこい笑顔のダンナさんにもう二度と会えないのね。
残念だわ。 


あ〜!! 恋愛小説が読みたい!
読んでいるうちに知らずに涙がこぼれるような。
心筋梗塞かとおもうほど胸がちくぅぅとなるような。 
しまいにはティシュの箱を抱えるような。
せつなさで眠れなくなるような。

帰りに寄った図書館で(車で送ってくれるひとが居なかった)、
読者を裏切らない極上の恋愛ものをと思ったが探す気力が出なくて、
記憶をたよりに片岡義男の本を何冊かごそっとつかんで、カウンターに出した。

片岡義男。 泣かせたっけ?  お洒落な感じだったかな。
借りた一冊の中に「日本語で生きるとは」 というのがあった。

オンライン書店ビーケーワン:日本語で生きるとは

日本語で生きるとは  片岡 義男著
1999.12  筑摩書房



タイトルからしてお堅い。 お堅い評論! 
片岡さん、わたしが離れていたながーいながーい間にこんなにも小難しいもんを
書いていたなんて。
と思いながらつい最初に開いてしまった勢いで読み出してしまうつきこさん。 
恋愛ものはどうしたんだ。


「よろしくお願いします」 という日本語を英語で言うには、
なんと言えばいいのですかと、十ヶ月ほどのあいだに五人の人たちから
訊かれたことが、この本を書くためのきっかけとなったそう。

英語圏の外国の人を相手に英語を使うとき、たとえば話のしめくくりのとき、
「よろしくお願いします」 を言う必要があるようなないような、
なにか言わないとおさまりがつかないような、
なにか忘れた妙な気分になるからと、質問者たちは言うのだが、
結果から言えば、 「よろしくお願いします」 なんて英語では言いようがないし、
そんなこと言う必要はないから言わなくてもいいんだそうで。
でも、五人は納得しない顔をしたそうだ。

その他にも、日本語ではいつも誰もが使う日常語なのに、英語にはならない、
あるいは英語では言えない言葉のひとつに 「愚痴」 があるそう。

「愚痴」。  それってどうして?  

なーんて、読み進めたけど、途中で評論を読むのに疲れてきちゃった〜。

英語と日本語はつまり発生した社会の構造からして違うってことなのね、
とわたしは理解した。
責任の所在をはっきりさせようとしないところがある。
英語と日本語は翻訳しあうのは、そもそもものすごい無理があるんだなあ。
なんだか男と女みたい。

無理でも幻想でも勘違いでもいいから、なんか恋愛もの読みたいわ。
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2006年04月23日

4月22日物語 : ひきこもってました


午前中、町内会長がやってきて 「一年間ご苦労様でした」とねぎらってくれた。
思ったほど忙しい仕事でもなかったし、 会合だってお茶すすってるだけだったし。 あとは総会出てお終い。 お役ごめんで嬉しい。
 
だーれもなり手がいなくてみんなうつむいて長い沈黙が続くとそろっと手をあげてしまうこのあほな性分から脱するぞ! と強く心に誓ったのに。

午後、娘の入学後はじめての懇談会があった。

あー懇談会かあ、行きたくないなあ。 でもこれから6年間娘がお世話になる学校のはじめての懇談会だものねえ。  だけどいっぱい人がいるんだろうなあ。  でも知らない人ばっかりだもの、誰とも親しく会話する必要ないから大丈夫かなあ。 どうしよう。 サングラスで防護して電車に乗るか。 でも教室ではいくらなんでもサングラスははずさなくちゃならないし・・。


「役員が決まるまで誰も帰れませんよ」と担任に脅されて、それでもみんなうつむいてしーんと時が過ぎるのを待っている。
あほな誰かががまんしきれずに手をあげるのを。
3人中2人は、最初からその気だったらしくすぐに手をあげた。 あと1人。 しーん。 ちっちっち(秒針の音)。 しーん。
5分経っても10分経っても決まらない。 ちっちっち。

そろっと手があがった。 あほなつきこさんでした。 あーあ、やっちゃった。

ここのところ体調が悪く、精神的にも鬱々としていて、必要最低限の買い物と本屋さんと公園にぼーっとしに行くくらいで、「会話」する気が起きなくて人からのお誘いもみんな断ってほとんど引きこもり主婦をやっていたのに、 ああいう場面に置かれると 「絶対、できない」 というほどの理由が見つからなくて、 つい。

おかあさんみたいなのを 「おっちょこちょい」と言うんだよと子どもに言われたけれど、 そうかも。

でも、これで「引きこもり主婦」から脱っせるかもとも思ったのだ。
どうしたのか、人と目をあわせるのも会話に突入するのも怖くて、スーパーに行くのでさえサングラスかけてそそそっと済ませてる。 なんか近ごろちょっと変だよな、つきこさん。 危ない。 
いや、見た目のこと(だけ)じゃなくて精神的に。  と、分析できるうちはまだ大丈夫よね。 ね?  誰か 「うん」と言って・・。

全然関係ない本だけど ハミザベス

オンライン書店ビーケーワン:ハミザベス  ハミザベス  栗田 有起  集英社

栗田有記さんははじめて読みました。 これはすばる文学賞とやらを受賞したものだそう。

死んだと聞かされていた父親が本当に死んだと知らされて、その上マンションを相続することになった20歳の女の子。

母ひとり子ひとりで生きてきたその母子の会話がとても素直に気持ちを出し合っていて清々しい。
父の愛人だったという20歳の女の子も感情を素直に言葉に出せる良い子。  なんかとても大人で、20歳の頃、そんなに大人だったかなあ、 えらいなあこの子たち、色々あっただろうに性格がひねてなくて、と思いました。
思い返してみると、もしかして、私も20歳のころは今より大人だったかもしれないな。 近ごろ富みにこどもっぽくなっている気もします。

愛人の職業も父の職業も不思議な職業で、父の精子はふつうより巨大で、 愛人の卵子もふつうより巨大だそうで、 研究施設に提供しているそうだ。 精子を製造する男性のその部分も広げると畳一畳ほどあるほど巨大なものだそうで・・、は? なんでしょうこの小説と読んでいて驚いた。 驚いたけれど、登場人物たちがばたばたと騒いでいないので、 私もあまり驚くのはやめて静かな文章の流れに身を任せました。

母と子の自立を描いたお話でしたね。 雰囲気が吉本ばななに似ていました。 吉本ばななほど心情を言葉にする感性が研ぎ澄まされていないけれど。 これが第1作目の作品だそうで、 すでに他にも何冊か出ているそうですが、どうなのかな? うまく育っていきそうな要素は十分ありますが。

さらっとした文章より、行間がむちゅーっとつまっていて登場人物達の性格が少しひねていて、せっぱつまった状況に置かれてもがき苦しんでいるようなもの、 ねっとりどろどろしたものを読みたいと思う今日この頃。
だからちょっと物足りなかったです。 

あ〜、役員かぁ。 責任感の名のもとに、どうにか自分をお外へ引きずり出させよう・・。
posted by tsukikohime at 00:25| Comment(6) | TrackBack(0) | かきくけこ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月10日

3月10日物語 : 酔って言いたい夜もある


酔うとあのひとはわがままになる。 なるようだ。 どうも。

長いつきあいなのに、まだ一度もいっしょにお酒を飲んだことがない。
でも、わたしはアルコールのはいったあのひとを知っている。
「飲んでました」と言うのだが、 足元が怪しげになるわけでもなく、 目が赤くなるわけでもなく、 アルコールの匂いに顔をしかめるほどではなく、 ほとんど普段と変わらない。

1センチほど饒舌になり、 2センチほどエッチになり、 30センチほどわがままを言う。
逢うまでわがままを言う。 逢ったらわがままを言ったことなどは忘れてしまった顔で、 わたしもあのひとのわがままを忘れてしまう。  逢えば忘れてしまうのだ。

1センチほど饒舌になって2センチほどエッチになったあのひとと逢う夜は、 10センチほど風変わりな場所でデートする。 

救急病院の、車もまばらな駐車場に車を止め、 出入り自由な暗い静かなロビーや広い前庭、 点在するいくつかの小さな裏庭をひそひそと歩く。

別のところに移動しませんか。 
わかりました。 どちらに。
どこか、どこでも、とりあえずあっちの方角に。 
車は少ないけれどその手はオトナシクしててください。 
わかりました、ごめんなさい。 
危ないからこの手をどけてください。  
冷たいですねつきこさん。  
運転中です。  
わかりました。
 
野川公園に隣接する武蔵野公園の脇に車を止める。
明かりは少なく慣れるまで草に覆われて見えない足元をそろりそろりと歩く。
浅い細い川をあのひとに背負われて渡る。
遠くの街灯に照らされたぼんやりとした木々の影をたよりに勇気を持って歩く。
低い枝を手で押えてもらいながらくぐる。

1時間も2時間も歩く。

疲れると立ち止まって星の少ない空と広がる暗闇を見渡す。

あちらに向かって歩きましょうか?
あのひとの指差すあちらを見る。
草に覆われた広い地面が続くあちらも、 木々が並ぶあちらも、 橋の見えるあちらも同じことだ。

疲れました。
もう、ですか。
おんぶしてください。
体力不足ですね。
はい。
ぼくばかり鍛えられてしまいますよ。
はい。
逃亡者のようですね。
逃亡者?
こんな真夜中に暗い広い野原や木々の間をあちらこちらに歩いて。

こんな真夜中のここへ来ようと言ったのはあなたではないですかとわたしは思うがわたしは言わない。 楽しくて言わない。 代わりに、 何から逃亡しているのかしらと聞いてみる。

だいじょうぶ、 だれもぼくたちを追ってはきませんよとなぐさめられる。

逃亡者のようですねと言ったのはあなたではないですかとわたしは思うがわたしは言わない。 嬉しくて言わない。

満ちていく月に向かっていくへたくそなオムレツのような月を見上げ、 ああ、あなたはとってもわがままだ、とおもう。

酔って言いたい夜もある

オンライン書店ビーケーワン:酔って言いたい夜もある  角田光代


お酒が入ると少しだけ饒舌になり緊張もやわらぐという角田さんの理想の対談形式は、
たとえば、 どこかの温泉宿に昼過ぎに到着し、 風呂などゆっくり浸かったのち、 酒を酌み交わし同じお櫃の飯を食い、 一晩眠った翌日の夕方頃、 ちびちびと酒を飲みながらゆるやかに始まる対談。 
しかし温泉に宿泊している物理的時間がないため、 理想の短縮型を行なった。
レストランや居酒屋で、 直箸で同じ皿の料理を食べ酒を飲みながら、の対談。

第1章 魚喃キリコ
  うちらのモロさとか弱さを感じることのできない男のなんとバカげたことよ
第2章 栗田有起
  「私は自分を恋愛でいっぱいにしたいんだわ」というのがわかっちゃうとダメなんです

【コラム】 「中央線」 ランチ写真日記

第3章 石田千
  刑事じゃないけど、吐いたら、楽になるんですよ
第4章 長島有里枝
  結婚なんか、中学の先生が朝練に出なきゃダメだっていう理由ぐらい大したことでもない

お酒が入れば口が滑らかになると言っていた通り、ずいぶん滑らかで、あらそんなことまで話してしまっていいのかしらと心配してしまうようなことまでぽろぽろと。

角田さんとゲストの方が食べたお品書きと店の案内も出ています。

エッセイよりもぐっと生の声が聞けて、角田さんのファンには嬉しい一冊ではないでしょうか。
イメージが壊れてひいてしまうか、身近に感じてますます好きになるのか・・は知りません。
posted by tsukikohime at 21:06| Comment(8) | TrackBack(0) | かきくけこ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月05日

3月4日物語 : 4月になれば

オンライン書店ビーケーワン:四月になれば彼女は

四月になれば彼女は というタイトルとオートバイ(でも、カブだけど) で片岡義男を連想した私はちと古いですね。

四月になれば彼女は はサイモン&ガーファンクルの歌の題名からきたものです。

プロローグは、ある作家への 「作家になろうと思ったきっかけは?」 というインタビュー場面から始まります。  その回想が本文となる。

映画になるとしたら、 プロローグがカラーで、 回想の始まりがモノクロで少しづつ色が付き・・・という感じだろうか。

高校を卒業した三日後。 八甲田山を望む田舎町に住む仲間がそれぞれの未来に向かって散り散りになる前日を描いた話で、作者の 川上健一 の自伝的小説と言われているそうだ。

とにかく忙しい一日だ。
主人公の沢木圭太にとって人生で一番忙しい24時間だったのではないだろうか。

東京へ駆け落ち(もどき)をするという友人を彼女の家まで送り、 途中友人にばったり出会い、 密かに想いを寄せていた女の子とばったり出会い、 東京の大学に行くという虫の好かない男と喫茶店でお茶をし、 別の友人たちとばったり出会い川に魚を捕りに行き、 不良グループに追いかけられ、 空気銃で雀を撃ちに行き、 バスケットの試合に行き、 悪友たちと春を買いに行き、 姉の夫婦喧嘩に巻き込まれアメリカ軍のMPと日本の警察に連れて行かれ、 翌朝、想いを寄せていた女の子に会いに行き、 駆け落ちするはずだった友人となぜか一緒に東京に行くことを決意する。

フットワークが軽いのは、 ホンダのカブのおかげですね。 カブは燃費が非常に良い。

それにしても若さなのねー、24時間をフルに生きているという感じだ。  アメリカの連続ドラマ 「24」 を思い出してしまった。 忙しい一日です。


静かな風景と静かな日々が最後劇的なシーンで終わり 「感動」 が大きかった 雨鱒の川を読んでいたので、 四月になれば彼女は も、 劇的な感動が待っているのに違いないと長い長い小説を 「劇的感動」 に向かってがんばって読んでいたのに、 本当なら明日から地元の工場に初出勤するはずだった主人公が 「東京に行く決心をいきなりつけた」 という本人にとってだけ劇的なことが起こるだけだった。


そして回想画面はすこしづつモノクロになり、 ざわざと都会の騒音が聞こえてきてカラーになり、 インタビュー直後の作家の現在の姿。 って感じかな。


自伝的小説であんまり良いものに出会えたことないなあ。
作者が一番、書いてて読んでて楽しんでるんじゃないかしら。
一般読者を置いてかないでくださ〜い、という気持ちになりました。

川上健一の今後に期待します。 

以上。 
posted by tsukikohime at 05:57| Comment(4) | TrackBack(0) | かきくけこ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年01月13日

1月13日物語 : 檸檬と憂鬱


丸善の隠れたベストセラーの中に 梶井基次郎檸檬があるそうだ。

檸檬の話の中には丸善が出てくる。

今でもたまに本棚にレモンがひとつ置いてあることがあるそうで、 ああ、檸檬を読んだなと。
そんな記事を最近新聞で読んだ。


再読してみた。
高校生の時に読んだのだったのか、中学生の時に読んだのだったか、いずれにしても遠い昔の話だ。

ああ、こんなに短い話だったんだな、それにしてもほとんどというか全く記憶に残っていない。

どうせ忘れちゃう話なら意味ないじゃない。 そんなことはない。

読んだ当時はその時の私に何かをもたらしたはずなのだ。 今、内容を覚えていなくてもその時生きていた私に何かをもたらし、少し育て、そして忘れた。

ひとつ思い当たるのは、これを読んでから病人のお見舞いには檸檬を買っていくようになったことだ。 でもこの小説の中にはそんなシーンはない。

例えば、今日見上げた月は、遠くで一度だけわおーんと鳴いた犬の声と冷たい空気と共に、月を見上げた私の心に何かをもたらし、誰かを思い、何かを考え、でも明日にはその月の形さえ忘れている。


今年はこの線で行こうかなと思った。
遠い昔に読んだ、例えば梶井基次郎三島由紀夫太宰治や、もうすでにこの世に居ない作家が書いたものばかり再読してみようかな。

言文一致の起源、二葉亭四迷の後あたりから。

この線で行こうかなとは思うけど、きっとそればかりとは行かないだろうな。
まあ、気に留めて読むように心がけておこう。


檸檬の主人公の私は、生活がまだ蝕ばまれていなかった以前に好きであった所のひとつに、 丸善があったが、今では、重苦しい場所に感じるようになっている。

えたいの知れない不吉な塊が私の心を始終圧えつけていて、何かが私を居堪らずさせる。
それで始終私は街から街を浮浪し続けている。

ある日、果物店でふと檸檬をひとつ買う。
すると、私の心を圧えつけていた不吉な塊が檸檬を握った瞬間からいくらか弛んで来て幸福な気持ちになった。

そこでやめておけば良かったのに「今日は一つ入って見てやろう」と丸善に入ってしまい、また憂鬱な気持ちに襲われる。

そして、あるいたずらを思いつき、実行する。


この本を読んで、この罪のない可愛いいたずらをする人が今もたまに居る。

主人公に嫌われてしまった丸善さんなのに、 「ああ、 『檸檬』を読んだのだな」とにやっとするのだろう。


檸檬を丸善の棚に置いてきた誰かさんの憂鬱は少しは晴れたかな。 


オンライン書店ビーケーワン:檸檬 檸檬 梶井 基次郎著 新潮社
posted by tsukikohime at 01:22| Comment(6) | TrackBack(0) | かきくけこ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年12月30日

12月29日物語 : ? SF ?


仮想世界で生涯を終えた者の魂は、果たしてどこへ向かうのだろうか?――意識と神についての物語が、現実と仮想を往還する。81年の初期作「抱いて熱く」から書き下ろし「意識は蒸発する」まで、20年の思索をそそぎこんだ神林文学の原点にして到達点たる連作集。


「これ、 私がリクエストを出したって?」

「うん。」



しばらく前に図書館から 「リクエストされた本が10冊とも揃いましたので、 取りに来てください。」

という電話があって、 年内には行かなくてはと思いつつ、昨日まで行けなかった。

昨日が年内最後の開館日だったので、空に取りに行かせた。 (わたし、風邪ひいてたもんで)


なんだっけ、これ。 覚えがない。  でも読んでみよう。  こうゆう出会い方もあるわけだ。

小指の先の天使 神林長平



「ぼくは小型の太陽熱エンジン付空気中水分凝縮機をキスリングの中に入れて持っていたけど、あんまり効率はよくなかった。・・」

?????


「海がなくなったのは地球外知性体のしわざです。 彼らは地球型生命場に干渉して人間の生体エネルギー場に変調を起こさせているのです。 地球侵略です。」

????????


「・・神の連中が神使機を使って外の人間の頭狩りをやった。  外部世界の新しい脳をあちら側へ持っていき、 その脳の記憶する外界の様子を楽しむためだ。・・」

???????????


「他人の意識へ潜り込む、 それがわたしがやっていることだった。 正確には、ヒトではない。  簡単に言ってしまえば、 コンピューターの数値空間へのダイビングだ。 コンピューターが生じさせている仮想空間であって、たとえていうなら夢の世界のようなものだ。」


????????????????


中短編あわせて七つ。  長篇ではないから読めたものを。  SF って読まないのよね、もともと。


でもね、 ひとつめの 抱いて熱くのストーリーがおもしろかったもんだから、つい読んじゃった。


SF的な理由で、人間同士が触れ合うと加熱して燃えちゃうんだって。

指先だけをちょこっと触れ合うとピリッとした感触がして、 恋人同士の18才のミテンと17才の桂子は時々そんなふうにして相手を確かめる。  でもそれ以上は、燃えて焼け死んでしまうからできない。

それでも、 抱きしめあい燃えていく恋人たちもいる。


SF的に、街や廃墟をさまよいある日、 もと海だった砂漠の中で村を見つける。

そこに住む人たちは触れ合ってもなぜか燃えないのだ。

なぜか?

住人の本体は墓石のしたにあり、 墓の中から意思信号で自分のロボットを操っていた。

「無線の神経だと思えばいい。 まったく違和感はない。 きみたちのものも用意してある。
 愛し合っているのだろう?  燃える身体など捨てたまえ。  このほうが自然なんだよ。」

逃げるふたり。  あの村へもどるべきかもしれないと、ふと思う。

しかし戻らない。

ついに飲み水も尽き、 桂子は言う。

「・・・抱いて、 いいよ」  「熱く、 抱いて」


わけのわからない SF的言語にも読んでいるうちにだんだん慣れてきて、だいたい言わんとしている意味もそれとなくわかってくると、 けっこうおもしろいストーリーだった。


初めてだけど 神林長平という作者が私にはアタリだったのだろうか。

SF界ではかなり人気のあるヒトなのだろうか。


風邪で熱があった普通じゃない状態だから読めたんだろうか。


読んで寝て読んで寝てしているうちに熱もいつの間にか下がっていました。  
少しだるいけど。


本を持つと手が燃えちゃう悲しい夢を見ました。。。 だから、やだー、SF。



・・・あれー? 空くん!!  これ、 あなたがリクエストしたんじゃない!!


「あー、 そういえばそうだった。」




オンライン書店ビーケーワン:小指の先の天使 小指の先の天使 神林 長平著 早川書房



 
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2005年12月15日

12月15日物語 : 一杯めのビール


同量の愛を与え合い続ける男と女っているのかしら、 春菊の天ぷらを箸でさくっと割りながら友人が言った。 間からごま油の香りとともにふわりと暖かい湯気が上った。

小動物のたましいが天に昇って行くみたいだ。


深大寺にざるそばを食べに行かない? と連絡があって私は彼女を車で拾って深大寺に来た。

天つゆにつけてしゃくしゃくっと噛みながら あとから運ばれてきたビールをコップに注いだ。

天ぷらが運ばれるとそれを見て、 やっぱりビール飲んでもいい? と彼女は言った。

わたしは運転もあるし、 そもそもビールを飲まない。


「あー美味しい」 彼女はこくこくっと喉を小さく鳴らしながら半分ほどを一気にあけた。


それが誰であろうと、 一杯めのビールを飲むひとを見るのがわたしは好きだ。

幸せを感じる時を指の数だけ挙げなさいと言われたら、 迷わず 「一杯めのビールを飲む人を見る時。」 を入れるだろう。

だから一緒に居る人がビールを注文すると、 もうそれだけでわくわく嬉しくなってくる。

ビールのビンとコップが届いたときから、 注いで口元に持っていき飲み、 コップをテーブルの上に置くまでじっと見てしまう。  目が離せなくなって一連の動作が終わるまでじっくり見てしまう。


「同量の愛ね。」  空を見ると本当に青空だった。  店の外に出されたテーブルで食べるには寒い季節だが やっぱり外で食べることにして良かったなと思った。


「在るとは思うけど・・・ 持続し続けるのは、 わたしは知らない。」

いつもどちらかがほんの少し重かったり、 ほんの少し軽かったり、 たくさん重かったり。


「映画や小説ではあるけれどね。」

友人は空になったコップに2杯めのビールを注いだ。


2杯めのビールを一杯めと全く同じくらい幸せそうな顔で飲むひとを一度も見たことがない。

だからわたしはもう見ない。


「小説ではどんなのがあった?」  友人は現実の話で考えるのを諦めたようだ。

最近読んだのでは、そうね、 川上健一の 雨鱒の川 がそうだった。

ずっと同量の愛が続くの?

うん、 小説の始めから終わりまで。

幼馴染みの二人が小学校2年生から書かれていて18歳で駆け落ちするまでね、 ずーっと1mmも変わらず同量の愛と信頼を持ったまま書かれている。

「すごいね。」

「何も迷わない。 疑わない。 傷つけ合わない。」

「すごいね。」

「二人は細い二本の糸が縒りあわさるように寄り合って生きているの。 一本になったら生きていけなくなるの。  本当に生きていけなくなるって 二人はわかっているの。  生きていくために周りに迷惑をかけて、 周りのスジを壊して二人は二人の気持ちを通すの。」

「すごいね。」

「すごいね、 しか言わないの?」

「だって、すごいもん。」

わたしたちは目を合わせてきゃらきゃら笑った。  「すごいね。」


「読んでいて気持ち良かったよ。  最初から最後まで。」

一冊読んでいるあいだ、 一杯めのビールを飲み干す人をずっと見ているみたいだった。


2杯め、 3杯めは感動が薄れるのだろう。

だらだらと飲んでいたら、 しまいには旨みなどなくなるのだろう。

まして仕事の付き合いやお義理で飲む酒は不味かろう。  それでも付き合わなければならないのがオトナなのかもしれない。  

そんなの嫌だ。  気持ちよくないことは嫌だ。  嫌だ嫌だと思いながら 「やめた!」 と言えない。  言っちゃいけないことになっているそうだ。

世の中そういうことになっているそうだよ、とりあえず。

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2005年09月26日

9月25日物語 : My Sweet Lady


新宿から湘南新宿ラインに乗って北鎌倉で降りる。 長い乗車時間になるので本を一冊持ってきた。

キョンナム の ポッカリ月が出ましたら という エッセイだ。  行きに半分読めたが、帰りは本を開かなかった。

約束の時間より15分前に着いたが、美咲さんはすでに来ていた。

二人でタクシーに乗り父の墓参りに行く。  手を合わせる前から美咲さんは泣いていた。 実は私の姿を認めた時から涙ぐんでいたのだけれども。

そのあとゆっくりと鎌倉まで歩いた。

美咲さんは父の最後の奥さんだった人だ。  父のえーと、1、2、3・・、そう4番目の奥さんだ。

「前にも聞いたことありましたが忘れてしまって・・ごめんなさい・・、 おいくつになられましたっけ?」

美咲さんは照れくさそうに教えてくれた。

私より九歳上だった。

「美咲さん、 私の父と結婚した時、今の私より若かったんですね。 なんだか信じられないわ。」

「どうして?」

「20歳も年上の人なんて。」

「年齢なんて・・・。 あんな素敵な男性が独身で居るなんて奇跡よ。」

「美咲さんが36歳の時、父は56歳だったのね。」

「離婚して半年くらいだったし、結婚どころか男の人と付き合うのでさえもうこりごりと思っていたのに。 人生ってわからないもんね。 生きてるものね、と思ったわ。」

「結婚する時、父は若くはないし、つまりその10年後とか20年後のこととか計算しなかったの?」

「つきこちゃん、 誰かを本当に好きになると将来なんて考えないものよ。 私は一緒に暮らせれば籍なんてどうでもよかったのよ。」

「でも、父がプロポーズしたのね。」

美咲さんは、真っ赤になってしまった。

「結婚は考えてもいなかったの。 でも、プロポーズされたら2秒後には 『よろしくお願いします。』 って答えちゃってた。 自分でも驚きよ。」

美咲さんはその時のことを思い出したのかくすくすっと笑った。

「幸せだったのね。」

「うん、短いけど幸せだった。」

父は最期の一年近くは入院していたのだ。  美咲さんは一日もかかさずに父を見舞い、一日の半分を父と過ごした。
  
朝、お弁当を持って病院に行き病院食を食べる父の隣で一緒に朝食をとり、一旦家に戻ると昼食用のお弁当を作ってまた父の傍で食べ、夕食も同じようにする。 それを一年近く毎日。 片道30分かけて。

病院の隣に住んでいたとしても私にそんなことが出来ただろうか。

最後のほう父は点滴だけになってしまった。  すると私の見舞いを拒んだ。

「つきこちゃん、ごめんなさいね。 お父様は自分の痩せた姿をつきこだけには見せたくないっておっしゃるの。」

あの父ならそう言うだろうな、と思った。

亡くなる2日前から父は意識がなくなった。  それでも見舞ったら父は怒るだろうな、などど矛盾したことを思った。  

父は想像していた以上にやせ衰えていた。 もうけっしてこちら側には戻ってこないことはその姿を見てすぐにわかった。

「話しかけると、瞼が動いたりするの。 だから聞こえてるのよ。 つきこちゃんが来たってきっとわかるから、話しかけてみて。」

「お父さん、怒らないかな・・・」

「怒らないわよ。」

怒れないのよね。

私は別人のようになってしまった父に声をかけた。

「お父さん」

驚いたことに父は薄く目を開けたのだ。  そして 「つきこちゃん。」 と言うとまた閉じた。

私はびっくりして美咲さんを見た。 (意識がなかったんでしょ?)と目で聞いた。

美咲さんはほんの少しの驚きの顔のあと、私に向かって (うん、うん)と頷いた。

「いっしょに・・」

声が小さいので耳を父の顔に寄せる。

「吉祥寺に、行って、コーヒー、飲みたいな。 渋谷に、出て、それから、井の頭線に、乗るんだ。」

それだけ話すのに一分くらいかかった。

私は顔を戻すと美咲さんの耳に向かって小さな声で言った。

「美咲さんと私とごちゃまぜになってない?」

「ううん、つきこちゃんだってわかってる。」  美咲さんは涙でぐしゃぐしゃの顔をしている。

私はもう一度 父の口元に耳を寄せた。  

「お父様、つきこよ。」

「吉祥寺で、美味いコーヒー、飲もうよ。」  目を閉じたまま父はひとことひとことゆっくり言った。

「うん、飲みましょうね。」

「つきこ。」

「はい。」

「つきこは、僕の。」

「はい。」

「マイ、 スィート、 レディ、 だよ。」


病室を出てエレベーターの前まで行くと私は顔をあげて美咲さんを見た。 そして二人とも涙でくしゃくしゃの顔のままプッと吹き出してしまった。 


「やっぱり父は、私と美咲さんを混同してないかしら?」

「ちゃんとつきこちゃんってわかってるわよ。 2日前から話すどころか意識がなかったのよ。」

「そう。 あの、さっきの 『マイ スィート レディ』 って聞こえました?」

「お父様って、ホントどんな時でもああいう人。」

「そうなのよね。」

いつもダンディで。 いつもカッコつけていて。 いつも洒落たジョークを言って。 いつも女性にモテていて。

それが最後の言葉で、父は翌々日に死んでしまった。



美咲さんと鎌倉駅で別れるとき、ずっと気になっていたことを聞いてみた。

「あれは、 ジョークで私を笑わせようとしたのかな。 それともダンディの部分を見せようとしたのかな。」

「うーん、難しいところよね。 表情がないし。 最後の言葉だったし。」

「あれは、 美咲さんに向かって言ったんだと私は思うの。」 

最後の言葉が美咲さんではなく私に言ったらしいことが長いことずっととても申し訳なく感じていた。

「ううん、 あれは絶対、つきこちゃんに言ったのよ。」

改札の手前で私は手を差し出して美咲さんと握手をした。

「美咲さん、 父を愛してくださってありがとうございます。」

「私も愛されたのよ。 お父様が最初に愛した女じゃなく、最後に愛した女になれたのはすごく幸せ。うん、誇りに思ってるの。」

今日一日の間に何度も涙を見せた美咲さんだったが、その言葉を言った時美咲さんははっきりと微笑んでいた。  

父と暮らせたのは生まれてから7年しかなかった。 大人になってからは好きな時に会うことができたが、 色々と遠慮があって実際はそう頻繁には会えなかった。  まるでデートのように吉祥寺の井の頭線の改札で待ち合わせて、会うとすぐに父の腕に手をからませた。 そして珈琲の好きな父と美味しい喫茶店を探しながら何軒も梯子した。

でも私は、父が暮らしたどの女性よりも短い時間しか父と過ごせなかったんだな。 

『マイ スィート レディ』 の 言葉は やっぱり 私のものとしてもらっちゃおう、もう決めちゃおう。 そんな決心を帰りの電車でしたら、とてもとても嬉しくなった。

          オンライン書店ビーケーワン:ポッカリ月が出ましたら
posted by tsukikohime at 02:21| Comment(0) | TrackBack(0) | かきくけこ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月20日

9月19日物語 : 高校生らしい殺人者

「昨日の月、綺麗だったね。」

「うん、 でも夜中に近所で猫がうるさかった〜。」

「春じゃなくてもサカリがつくのかな。」

「満月の時はわりとはしゃいでるよ、猫ちゃん。」

「そうなの?」

「それとね、 十五夜をしっかり見たなら、十三夜も見なきゃだめらしいよ。」

「え、どうして?」

「『片月見』 って言ってね、 両方を見て初めて 『お月見』 になるそう。」

「えー、十三夜っていつなのー。 ”さんだらぼっち” の時みたいに意地悪しないで教えてー。」

「旧暦の9月13日だからね、 今年は 10月15日ですよ。」

「そうなんだ、両方見なくちゃいけないんだ。 なんか忘れそうね。」

「見なくちゃいけない・・ って、どうしてなんだろうね。 十五夜はもともと中国から伝わったらしいけど、 十三夜は日本独自のものらしいよ。  風習や諺、言い伝えだけ残って意味が置き忘れられてるのとかあやふやなのっていっぱいあるよね。」

「あるよね。 『夜、笛を吹くと蛇が出てくる』 とか。」

「知らない、それ。 『夜、爪を切ると親の死に目に会えない』 っていうのあるけど。」

「意味不明だよね。 何を戒めたかったんだろう。」

「電気のなかった時代のはなしかな?  日が暮れると良く見えないから、そんな中で爪を切ると怪我するよってこと? 目を悪くするよってことかなあ。」 

「でも 親の死に目に会えない、なんてそこまで言って脅すことないじゃないね。」

「ものすごく深い意味が隠されてるのかな?」

「うーん。 わからない。」

「地方によっても色んな 言い伝えみたいなのあるんだろうね。」

「外国にもそれぞれその国の長い歴史から生まれたものがあるんだろうし。」

「宗教にもよるしね。 『お天道様が見てますよ。』 『お月様が見てますよ。』 とういのは、日本だけかしら?」

「それって、電車の中で、 『隣の怖いおばちゃんが睨んでいるから静かにしなさい!』 と言って子供を叱る母親に 似てない?」

「ちょっと違うんじゃないでしょうか。 母親は睨まれた事に対する腹いせを(怖いおばちゃん)と強調して言っているわけだし。 でも 子供は 『隣のおばちゃんさえ、怒らなければ騒いでもいいんだー』 って学んじゃうね。  昔、読んだ あの有名な 菊と刀に書いてあったように、西欧は 『罪の文化』 で、日本は 『恥の文化』 を持っているからかな。」

「見られなければいい、 迷惑かけなければいい、 ばれなければいい・・・ってこと?  菊と刀 なんて 内容すっかり忘れてしまった。 つきこ、持ってるなら貸してくれる?」

「ところが、持ってないし私も内容をほとんど覚えていないの。 えへへ、実はね、 貴志祐介 の 青の炎の中で出てきたの。」

菊と刀 のことが?」

「うん。 主人公の17歳の男の子が思うの。 (もし、ベネディクトが説くように 西欧が 『罪の文化』 で 日本が 『恥の文化』 を持っているとすれば、日本では、 露見しない犯罪は、犯罪ではないことになるではないか。 つまり、日本人は、民族的に、世界で最も完全犯罪に向いているのかもしれない。) って。」

「その主人公は これから完全犯罪を目指しているから そのように読んだのね。」

「多分。 菊と刀 の内容自体よく覚えていないから、なんとも言えないです。 だからもう一度読んでみたいなって思ったの。」

「私は 青の炎 を 読みたいわ。」

「主人公はとても成績優秀な高校三年生でね、  物理や化学、英語、現国、美術 などの授業内容と絡みながら いろんな思考をしたり悩んだり、そして完全犯罪の方法を思いついたりしていくの。 だからとても高校生らしい殺人者なのよ。」 

「高校生らしい殺人者・・」

・・って、なんか変な言い方ですね。  

貴志祐介はこれを書くにあたって大勢の現役高校生や、最近まで高校生だった人たち、そして高校の先生から話をたくさん聞いたそうです。

”高校生らしい(17歳らしい)殺人者” を 書きたかったからでしょう。

私は涙が出る一歩手前でぐっと堪えることができましたが、 高校生や17歳が読むと どんな感想を持つのでしょうね。
 
もちろん人によりけり様々な感想を持つでしょうが、 その年代特有の感受性でこの作品を読める年頃の人たちを羨ましく思います。

オンライン書店ビーケーワン:青の炎青の炎貴志 祐介〔著〕
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2005年09月07日

9月6日物語 : へそまがり


いまさら、とういうか今頃、 セカチューを読んでしまいました。
読んでしまいました、という言い方になってしまいました。

なぜでしょう。

騒がれすぎたからでしょうね。 

騒がれすぎると、手を出しづらくなるって・・・ へそまがりですね。

ブームも過ぎたしブックオフで100円で売ってるし、どれどれ読んでみるかという可愛げのない態度で読みだしました。

映画版をノベライズ化した 益子昌一 の 指先の花 と あわせて 200円で購入。 

セカチューの続き物語を映画化したいと思った 行定 勲監督が 益子昌一に脚本を書かせたそうです。

先に  片山恭一 の 世界の中心で、愛をさけぶ の ほうを読みました。

するりときれいなお話ではないですか。  

続けてすぐに、 指先の花 を読みました。

なるほど、映画は観ていないけれど こっちが映画のストーリーなのね。 

なんとなくね、 (商い)の 匂いがしてしまって 素直に読めなかったです。 

片山恭一 は どう思ってるのかな。
  
自分の小説に その後の続きや裏のストーリーを他の人につけられて嬉しいものなのかな。
  
そしてそれが映画化されて。 小説家として嬉しいのかな。 お金がいっぱい入ってきたから それでいいのかな。

片山恭一が小説家としてとっても複雑な気持ちになってるといいな、と思いました。
悩んだり困ったりしてるといいな。

きれいな話だったから余計に。 

そんな余計なことを考えてしまいました。 

そんな余計な心配をかけさせられるような気がしたから、 
この手のは、 手が出しづらくなっちゃうんですよ〜。

私だけ? ・・じゃないと思います。

指先の花
指先の花
posted with 簡単リンクくん at 2005.11.20
益子 昌一著
小学館 (2004.5)
通常2-3日以内に発送します。
posted by tsukikohime at 01:47| Comment(4) | TrackBack(1) | かきくけこ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月03日

9月2日物語 : 躁鬱躁鬱

あれ?夏休み終わったと思ったけれど、明日は土曜日なのね。 

昨日、海が買った角田光代 の みどりの月 を 読みました。 以前、だれかのいとしいひと という短編集を読んだ時は、わりと良かったので期待していたんですが。

「小学校の低学年が2列か3列に並んで、芋掘り遠足に行くとするでしょ。 公共の歩道を歩くので他の人の迷惑にならないよう列をはみ出したり大はしゃぎしたりしないように事前によおく先生から注意を受けるじゃない?」

「興奮してるからね。」

「最初はまじめに歩いているんだけど、 歩道の植え込みの下に落ちているナニカが気になってピョコンと列からはみ出しちゃう子って必ず居るよね。 しゃがみこんでじっと見ちゃう子。」

「いるいる。 先生とのお約束も忘れ、団体行動のルールも忘れ、ふらっと出ちゃう子。」

「お約束をあたりまえに守ることが出来る子と、 はみ出しちゃう子と。」

「あと悪ふざけをしちゃう子もいるよね。 わざとまわりにちょっかい出して騒ぎを起こしたがる子ってね。」

「それと、もうひとつタイプがあるのわかる?」

「うーん」

「ふらふらっとはみ出す子に ものすごく関心を寄せる子。」

角田光代の小説の主人公は、 そういう (ふらふらっとはみ出す子) にあこがれているタイプの人が多いです。

あこがれて、(ふらふらっと) を真似してみるけど自分はそういうことが自然に出来る人間ではないことにうっすらと気付いて (出来る人間) を嫉妬して、 でもまたあこがれて イライラしている。

これが短編だとキレもあるし起承転結が早くて 「うん、たくさん悩んで一歩一歩進もうね。」 とぽんと肩のひとつも叩いてあげたくなりますが、 中編以上になってくると主人公のイライラが感染してきます。

「長いと、会う度に同じ愚痴をこぼしてばかりいる人の話を延々と聞かされてる気になってくるの。」

「多分、(鬱病)が 入ってるんじゃないの? そういうの?」

「境目がわからないもの。 自分も ウツじゃないかと思うときあるし。」

「人間誰しも、軽い躁鬱躁鬱の繰り返しをして生きてるような感じだものね。」

「人前でもコントロールが出来なくなるかどうかかな?」

とてもとても難しい問題。 

病院で鬱病と診断された知人が実際にひとり居て、 毎日電話をしてきます。

ただただ 「うんうん」と話を聞くことしかできないけど、 こちらの精神状態にも波があるので
電話が鳴るとドキッとしてしまいます。

いま、ごはん作ってるのになー、 いま、子供と話をしている最中なのになー、 いま、お風呂に入ろうとしたのになー・・・。

30分くらい話を聞いて、電話を切る時に 「なんかすっきりした。」 と言ってもらえると 「電話に出てヨカッタ」 とほっとしますが。 明日も同じ話をするんだろうな、と・・。

どうしたら良いんでしょうね・・

 オンライン書店ビーケーワン:みどりの月角田 光代著
posted by tsukikohime at 10:33| Comment(0) | TrackBack(0) | かきくけこ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月28日

8月27日物語 : うずうず感を楽しむ

一週間前までは、みーんみーんが主役だったのに、台風の前日あたりからオーシツクツクオーシツクツクの声のほうが目立って聞こえる。  
きーんとするほど匂った白粉花の香りも止んでしまった。

夏休みはあと五日。
東京の夏は、 もう終わっているのかもしれない。


夏休み中に全部観ちゃおうね、と言っていた 24 twenty four も 6巻までしか観れなかった。 12時間分、観たわけだ。 
最初は、24を24時間で、 せめて48時間で観よう! なんて、張り切っていたんだけどね。

家にある24は、ファースト・シーズンで、 今 サード・シーズンまで出てるのかな。
さてさて全部観ることは出来るのでしょうか。

アメリカのTVドラマって面白いですね。 

時間が作れるものなら、またツイン・ピークスを観たい。
観ている間、ずっと納まりのつかない不安な気分、奇妙な胸騒ぎを抱えたまま観てました。
エロティックで恐ろしい底なしの夢を観ているようで、早くラストにたどり着きたくて、でもじっくり堪能したくて・・・奇妙なドラマでした。

ようやくたどり着いたラストでは、 すっきり感なんか全くなく、鬱憤が溜まったまんま放りだされます。

観終わったときに発した言葉は、 「あんまりだ・・・。」 でした。

謎解きを期待して観たらいけないです。 雰囲気を味わうものですね。  ビデオで15巻分、飽きさせないです。

すっきりしないのは、わかってるけど また観たい。

一歩手前のうずうず感が いい。

10年以上も前に観たのに、BGMが、頭にこびりついて残っています。 あの曲が、リンチ監督の映像とぴったりはまるんですよね。

これは、本で読んでも面白いです。 
扶桑社ミステリーから ツイン・ピークス − ローラの日記 というのと、 ツイン・ピークス − クーパーは語る というのが出てます。

私はドラマを観たから面白く読めちゃうのかなと思っていたけど、 私の知人が 観る前に読んだのに 「良かった〜。」と申しておりました。

リンチの映像も音楽もないのに、 楽しめるって、どういうことでしょうね。 

文章のチカラって すごいです。 というか、 それだけの文章を書ける人がすごいのかあ。

ローラの日記のほうは、 リンチ監督の娘が著していますが、 翻訳者の力量もあるのでしょう。
 

今日は、題名に惹かれて買った 川西 蘭 の ブローティガンと彼女の黒いマフラー というのを読みました。
ブローティガンとは、 リチャード・ブローティガン のことです。  もしかしたら、著者は私と年代が近いかなと思いました。

川西 蘭 という作家を読むのは、初めてですが・・・、この短編を読む限り、ストーリーはおもしろかったのですが・・・、 文章が、 うーん、村上春樹色でした。 
他の作品もそうなのかしら。 一作品だけで判断してしまうのは申し訳ないからまた機会がありましたら他作品も読んでみますが。

村上春樹に影響されてるなとわかる文章を書く人っていっぱいいます。 

みんな、何かに影響されてるわけですが、 せめて素人にわからないように、 個性的にお願い致します、です。 
posted by tsukikohime at 00:18| Comment(0) | TrackBack(0) | かきくけこ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月07日

8月7日物語 : ぶち切れる

 
 「こんにちはー! 何コレ! この大量の本。 退院したら、古本屋でも始めるつもり?」

 「みんなに、 『お見舞いには、本、本。』 とメール送りまくってたら、こうなっちゃった。」

  更年期障害が原因の骨折で入院しているマツコのところに、サコと一緒にお見舞いに来た。 [注: 7月24日物語 を参照していただけたら・・・]

 「全部、読んじゃったから、好きなの持って行っていいよ。 退院の時、荷物が多くて大変だから。」 

 「わーい、本当?」 

 「ちょっと、このベッドの上に全部あけちゃっていい?」

 「えーと、読んだことあるのはこっちに置いて、読んだことないのはここに乗せよう。 ちょっと、マツコ、足、どけて。」

 「あ、それ、私は読んでないから、こっちこっち。」

 「ねえ、これ、誰が持ってきたの? これとこれとこれ、それとこれ。 同じ人でしょ?」

 「あー、ナカさんよ。 ご主人が、浮気してたじゃない。 これで、4人目だとか、5人目だとか。 今までは、遊びっぽくて長続きしてなかったけど、今回は長いし、相手の女性と密会する為にアパートまで借りてるって言ってたの、聞いた?」

 「知ってる、聞いたよその話。 アパートの契約書、見ちゃったんでしょ。 でも相手の女性、遠いんじゃない? 茨城だとか。」

 「だから、ね。 東京と茨城の中間地点にアパート借りちゃった方がホテル代より安く付くんじゃないの?」

 「『あの人を愛してるの。 いつか自分のやっていることが間違いだと気付いて、きっと私を愛している事を思い出す日が来るわ。』って、ナカさん、言ってたよね。」

 「ね、付箋まで、貼ってあるよ。」
 「こことここ、ピンクのマーカーしてある。 あ、ここも。」

 「ご主人、その人と別れたの? だからこの本、要らなくなったのかしら。」

 「ナカさん、 それまで、メールを盗み読むなんて卑怯なことしないわ、と思ってたらしいんだけど、ある日、ご主人、携帯開きっぱなしで昼寝してたらしくて。 ・・・そのメールのやりとりの文章が、全部、幼児言葉だったんだって。  『なおちゃんは、ケイコタンに早く会いたいでちゅー、この次、かわいいパンティのおみやげ買っていきますでしゅね。 着せ替えごっこちまちょうね。』 『ケイコタン、うれぴー、抱っこしてチュウでちゅう。』、とか書いてあって、読み終わった途端、ブチンって何かが切れたんだって。」

 「ちゅうでちゅう・・・。」

 「で、ご主人を叩き起こして、その携帯のメール突きつけて、アパートまで案内させて、相手の女性の居る前で離婚届け書いて、その場で印鑑押させて、おしまい。  おろおろしている相手の女性に 『あげるわ! 返品お断り!』って言ったんだって。」

 「(愛してた)んじゃないの?」

 「『気のせい、だったわ。』だって。」

 「へー、しばらく会ってないうちに、そんなドラマが。 どう?彼女、その後。」

 「どうして四年も悩み苦しんでたんだろうって。 子供達も明るくなって一家三人経済的には苦しくても、気持もラクですごーく幸せ! だって。 失った時間は取り戻せないけど、今、気付いて良かった!て、泣いてたよ。 なんか、若々しくなったし、綺麗になったみたい。」

 「それは、良かったわ。 めでたしめでたし。」

 「この本、とても興味深くておもしろかった。 悲惨な話もいっぱいあるけどね。 色んな夫婦が居るんだな。 色んな男と女が居るんだなって。 色んな愛があり、色んな悲しみがあり、別れがあり、死もあり・・・、なんかもう、何でもアリ!って感じ。」

 「『事実は小説よりも奇なり』だもんね。 これ、全部、ノンフィクション、ルポでしょ。」

 「亀山早苗のが一番良かったから、最後まで捨てなかったんだって。 こういうルポ、いっぱい出てるけど、他のはライターが出過ぎというか、デバガメ的な感じが、鼻に付くって。」

 「じゃ、読んでみる。 ま、今後の参考の為に。」

 
  病院の帰り、サコと喫茶店に寄って、本を並べた。 

 「しかし、まあー、ナカさんも集めたねー。 資料集め、好きだもんねー。」

 「(感情)より、(理屈)や(計算)や(世間の常識)が先の人だったからね。」

 「彼女、ぶち切れて、ヨッカッタね。」

 「ぶち切れるって、必要な時もあるのね。」 


  







  
posted by tsukikohime at 23:45| Comment(0) | TrackBack(0) | かきくけこ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年07月14日

7月7日物語 : まだ月には帰れない

 
『つきこさん こんにちは。 火曜は急な仕事のせいでごめんなさい。あらためてお願いしたいのですが、明日はあいていますか? 逢っていただけるでしょうか』

『こんにちは。明日、大丈夫です。』 もちろんよ、マサユキさん。

『ありがとうごさいます。 時間がはっきりしたら連絡しますね。 夜遅くになってしまうと思いますが』

『はい わかりました。 連絡お待ちしております。』


午前10時15分。 携帯を閉じるとパソコンの画面に急いで目を向ける。
うっそー、下がらないで下がらないで。 携帯のメールに気を取られている間に値が下がってしまった。あ、上がりそう。 うーん、2610円でいいか。 <4304>はどうかしら。 どんどん上がっていく勢いについ惑わされて買ってしまったけど…。 今日はこの株、動きがはげしいわね もう出掛けなくてはいけないし。 日足と週足を見る。 うん、1000円しか儲けられないけど、346000円に指値。 小額でも利益を確定しておかないと出先でも気になって仕方ないものね。


洗面所に行き鏡の前でマスカラをつけ、口紅をもう一度重ねる。 髪を梳かし、ETERNITYを指に付け耳の後ろにちょっと。 少し迷って膝の裏に少し。 イチロウさん、この香りが好きだと言うくせに、結局は会って一時間もしないうちに全身を丁寧に洗ってくれちゃうんだもの。

パソコンの前に戻ると<4756>も<4304>も売れていた。 O.K. 今日は3000円。

10時30分。

『15分程、遅れそう、ごめんね〜』

『了解。 慌てると転んじゃうぞ。 いつものカフェで本を読んで待ってるから大丈夫だよ。』

本。
バッグから単行本を取り出しテーブルの上に置く。
 
幸田真音(こうだまいん)凛冽の宙 p.261。 いいとこなのに。 

今夜は続きは無理ね。

今夜の私はベッドに入った途端に、カラダに残った気だるい余韻と心のチクチクを楽しむ暇もなく暗い闇の底に沈んでいくのだろう。

イチロウさんなんてもう好きじゃない。

あの闇は痛い。 痛い。

あの闇は、 海の底。 地の底。 宙の底。

オンライン書店ビーケーワン:凛冽の宙(SORA)凛冽の宙(SORA) 幸田 真音著
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posted by tsukikohime at 22:38| Comment(0) | TrackBack(0) | かきくけこ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする