群青の夜の羽毛布 (←触ると過去の記事に飛びます) を貸していた友人がその本を返しにきて、 ぺちゃくちゃとあの本がいい、 この作家がいいなんておしゃべりして、 やっぱり
山本文緒はすごいよね。 この本もすごかった。 うん、 すごかった。 あのほらあそこのところ。 ここここ。 ほらまさかこうなるとは。 え、それ、そういう意味だった? そうでしょ、違う? だってほら、 最初のほうのこの言葉。 ああ、あーそうか。 でも、そう? ん〜。 ちょっともう一回読みたくなった、 貸して。 いいけど、読んだばかりでしょ? でも、結末がわかったうえで、 あらためてまた読みたくなった。
と、 また持って帰っていってしまいました。 Sちゃん、あなたです。
ちょっとちょっと山本文緒にはまだまだおもしろいの、たーくさんあるのよー!
じゃ、次に来たとき、 どれか、貸して。
りょーかーい。
さて、どれにしようか、と棚からてきとーに手に取ったら、 それは
ブルーもしくはブルー。
開いたとたん、 しまったー! そのままその場でいっきに最後まで読んでしまった。
再読。
ストーリーも結末もわかっているのに、 え、どうなるのどうなるの (だから、わかってるのにー)と、ページをめくるのももどかしく。
ブルーもしくはブルー 山本 文緒〔著〕 角川書店29歳の蒼子は6年前に2人の男性と付き合っていた。
ひとりは、 料理屋の板前をしている2歳年上のやんちゃ坊主のような河見。
裏表のない性格だが、 嫉妬深いところがあり、そこが少し恐い気がする。
郷里の福岡にいる父親が倒れたので、 いっしょに帰ってくれないかと頭を下げられた。
もうひとりは、 広告代理店に勤める都会的でスマートな佐々木。 いつも温和な笑顔を浮かべ清潔感がある。 ただベッドにいる時でさえ、 よそゆきの顔をしているように感じるのだが。
どちらも同じくらい好きで、 どちらを選んでもどちらかを捨てたことを後悔しそうだった。
悩んで悩んで結局、蒼子が選んだのはどちらだったのか。
蒼子Aが選んだのが、 佐々木。
蒼子Bが選んだのが、 河見。
東京に、佐々木蒼子がいて、 博多に河見蒼子がいる。
悩んで悩んで悩みすぎてそんなことになってしまったらしい。
と、ここらへんまあ、不思議な現象なんですが、 2人はばったり出会ってしまう。
ドッペルゲンガーなのかとか、 どちらかが本体でどちらかが影で、 どちらかが死ねば片方も消えてしまうのか、 などという恐怖も折りこまれつつ、 とにかく蒼子Aと蒼子Bは、6年後にばったり出会ってしまう。
最初はもちろんあまりのそっくり具合に気味悪がって、 そのうち幼馴染みに会ったみたいに (当然です、 ふたりは途中までひとりの人物だったのだから) きゃあきゃあと共通の昔話で盛り上がったりするのですが、 しだいに お互いの選んだ生活がどんなものなのかとても興味が湧いてくる。
余るほどの自由(時間と金銭)を持ちながら夫に振り向いてもらえない東京の蒼子Aは心の拠り所を欲しがっていて、 両腕の中から出すことを嫌い、 お前さえいればいいんだ、 ふたりでいることが全てだと強く愛されている蒼子Bはそれを束縛に感じている。
ふたりの蒼子は、 お互いに出会ってしまったおかげで自分の心の奥底の不満や願望に向き合うことになってしまったのだ。
彼女達の独白を聞いてみましょう。
河見蒼子・・・河見との生活は、 東京で暮らす蒼子から押しつけられたものであるとも言えるのではないか。 二台ある自転車のぴかぴかの方をあちらの人が先に乗って行ってしまったので、 自分は仕方なく残された錆だらけの自転車に乗って人生を走っているのではないだろうか。
佐々木蒼子・・・私は選び間違えた。 きれいな見かけに騙されて、 私は欠陥車を選んでしまったのだ。 埃をかぶっていたもう一台の車こそ、 人生を快適に走り切る性能のいい車だったのだ。
自転車や車にされちゃってますね。
そこでふたりは一ヶ月の約束で入れ替わってみることにしたのだ。
ファンタジーはホラーに、そしてサスペンスへと・・・。
もうひとりの蒼子を殺してしまうしかない、というところまで行きます。
稲森いずみが蒼子役になってNHKでドラマ化されていたようですが、 どうも小説とはラストが違うらしいですね。
歴史に「もしも」はない、と言いますが、 もしもあのとき・・なんて、思ってみてもどうにもならないですよね。 ここにいる自分が今日までの結果なんです。
思ってみるくらい、いいじゃないのー!
思ってみるくらい、いいかもしれませんが、 思ってみたくなる時って危険なときかもしれない。 蒼子たちは体験してしまいました。
別の道を選んだ自分がどこかで生きていたとしたら、
もう、 勝手にそっちはそっちでやっててください。
こっちはこっちでやってますから、です。
たとえば、 アイルランドでアイリッシュの夫と牛の乳を搾っていたり、 刈りたての羊の毛でセーターを編んでいるつきこさんがいたとしても、 つきこさんはつきこさんであって、 感じていることや考えていることに大差ないと思うのよ。
どうでしょうか?
読む人によって、いろんな受け取りかたができ、 刺激されるところが違うから、
本っておもしろい。